【超解説】プロが教える断熱DIYリフォームの内容と手順 公開日:2025年5月10日/更新日:2025年5月10日 執筆者 Yanagisawa Naoki 気密測定技能者・しろあり防除士・WEB解析士 2007年に日本でセルロースファイバー断熱工事のパイオニアであった、有限会社信濃ビケン(長野市)に入社。セルロースファイバーの施工職人として従事。2012年に株式会社テオリアランバーテックに統合され、入社から10年以上で約2000棟以上のセルロースファイバー断熱工事や気密測定技能者の経験を経て、現在は断熱・気密に関する正しい情報を発信するため活動している。 暖房を強めても足元が冷える。 エアコンを切った瞬間に部屋が冷める。 その原因の多くは「断熱不足」にあります。壁や天井、床下、さらには窓まわり。住宅にはいたる所に熱が逃げ出すルートがあり、適切な断熱層を設けない限り、どれほど高性能な暖房機器を導入してもエネルギーは外へ漏れ出してしまいます。 本記事では、「我が家を自分の手で快適にしたい」という DIY 志向の読者に向け、材料の基礎知識から部位別の施工手順、そして専門業者に依頼するかどうかを判断するポイントまでを網羅的にまとめたものです。 読み終えれば、我が家のどこをどの順番で手を付ければいいか、そして必要な予算と工具がいくらになるのかなど参考にしていただけると幸いです。 目次 Toggle 断熱DIYを始める前に知っておくべきこと断熱DIYで得られる3つの効果(光熱費・健康・資産価値)DIYとプロ施工のコスト比較例安全に作業するための服装・工具プロに頼むなら着工前に確認したい補助金制度断熱性能を数値で読むコツDIYで使える断熱材の種類と選び方発泡プラスチック系:スタイロフォーム・ウレタンミネラルウール系:グラスウール・ロックウール天然素材:セルロースファイバー・羊毛価格&入手先(ホームセンター・ネット通販)部位別・初心者でもできる断熱DIYの手順天井グラスウール:敷き込みのコツ床下押出発泡ポリスチレン敷き込み:防湿シートと根太間施工壁内充填:防湿シートと石膏ボードの戻し方窓まわり:内窓・シーリングで冷気を遮断「ここまで DIY」「ここからプロ」判断チャートDIYで済むケースと注意すべき危険作業予算・時間別シナリオ(窓DIY・窓+天井DIY・床下プロ)こう選ぶと失敗しにくいプロに依頼する場合の見積もりでチェックすべき5項目断熱DIYの成功事例&失敗談失敗談:熱欠損や怪我を招いた原因と対策プロからのアドバイス&地域コミュニティ 断熱DIYを始める前に知っておくべきこと 断熱DIYで得られる3つの効果(光熱費・健康・資産価値) 第1の効果は光熱費の削減です。たとえば、築25年の木造住宅で壁と天井の断熱性能を現行省エネ基準相当まで底上げしたところ、年間の暖冷房消費電力量が約30%下がったという事例があります。電気料金単価が身にしみて感じる昨今、この差は家計にとって決して小さくありません。 第2の効果は身体的・心理的な健康改善です。室温が安定すると結露が減り、カビの発生源が抑えられます。その結果、アレルギー症状の緩和やヒートショック事故の抑制が期待できます。外気温と室内温度のギャップが小さくなれば、家事や趣味に向かう気力も自然と高まるものです。 第3の効果は将来の資産価値の向上です。欧米では断熱性能を示す「エネルギーパス」が査定に直結しますが、日本でも住宅の長寿命化と省エネ性能に対する評価が進みつつあります。DIY であっても性能向上工事の履歴を残しておくことで、売却や賃貸の際に差別化要素として活用できます。 DIYとプロ施工のコスト比較例 例①:天井裏 60 ㎡を100 ㎜厚のグラスウール(16K)を2枚重ね〈合計200 ㎜〉で敷き込むケース 材料費:100 ㎜厚グラスウール16K(1 枚=1 ㎡想定)→ 1 ㎡あたり約750 円 × 2 枚 × 60 ㎡ = 約90,000 円 工具・消耗品費:マスク/メガネ/カッター替刃/ステープル針/養生材など→ 約5,000 円 自己作業時間:既存断熱の撤去・清掃 3 h + 材料カット・敷設 6 h + 片付け 2 h→ 合計 11 時間(週末2日想定) 総コスト(DIY):約95,000 円 + ご自身の労力 同条件を専門業者に一括依頼した場合は、 人件費(2人×1日) 産廃処分費 完了清掃・保証費用 が加わり、30万〜35万円程度が一般的な相場です。時間の節約と施工精度を重視するか、費用を抑えて達成感を取るかが判断ポイントになります。 例②:床下 60 ㎡を厚さ 50 mm のスタイロフォーム(押出発泡ポリスチレン)で敷き込むケース 材料費:スタイロフォーム 50 mm厚(910 × 1,820 mm=約1.65 ㎡/枚) ⇒ 60 ㎡ ÷ 1.65 ㎡ ≒ 36 枚 単価 約 2,000 円/枚 →約 72,000 円 固定・隙間処理材 樹脂ホルダー(根太裏ビス固定用)80 個 気密パッキンテープ 2 巻 発泡ウレタンフォーム 2 本 →約 8,000 円 工具・消耗品費:防じんマスク/ゴーグル/ニーパッド/カッター替刃/コードレスインパクト/養生シート など→ 約 6,000 円 自己作業時間:清掃 2 h + 材料カット 3 h + 敷き込み固定 6 h + 隙間充填・片付け 3 h→ 計 14 時間(週末2日想定) 総コスト(DIY):約86,000 円 + ご自身の労力 同条件を専門業者に一括依頼した場合は、 材料・運搬 人件費(2 名 × 1.5 日) 産廃処分・清掃・諸経費 が加わり、35万〜40万円程度が一般的な相場です。 判断ポイント 費用対効果:DIY なら材料費+1日半の作業で 8 万円台。プロ依頼は 3 倍前後だが、作業姿勢がきつい床下での安全性と施工保証が含まれる。 施工精度:板同士の隙間をウレタンで確実に埋められるかが鍵。ムラが残ると断熱欠損が発生しやすい。 体力・安全:床下高が 400 mm 未満の場合は匍匐前進の長時間作業になり、転倒や突起物による負傷リスクが高まる。 床下に十分なクリアランスがあり、DIY に慣れた方ならコスト圧縮効果は大きい一方、狭所作業が苦手・腰痛持ちの場合はプロ併用を検討すると安心です。 安全に作業するための服装・工具 防じんマスク(DS2 以上推奨):微細なガラス繊維やセルロース粉塵を吸い込まないため。 保護メガネ:上方作業時、目に落ちる繊維から守る。 袖口を絞った長袖作業着・軍手:肌へのチクチク感を軽減。 カッター & 替刃、ステープルガン、タッカー:材料を正確な寸法で切断・固定するための基本セット。 メジャー、差し金、チョークライン:正確な採寸・墨出しは仕上がりを左右する。 脚立や床下用キャスター台車:高所や狭所の安全移動をサポート。 安全対策を怠ると作業効率が落ちるだけでなく、あとから体調を崩してしまい、せっかくの DIY 熱が冷めてしまいます。時間配分と同じくらい入念に準備しましょう。 プロに頼むなら着工前に確認したい補助金制度 断熱改修には自治体や国が用意する補助金が多数存在します。代表的なものは国交省の「子育てグリーン住宅支援事業」と環境省の「先進的断熱リノベ事業」です。たとえば外壁・屋根を対象に断熱性能等級5相当まで強化すると、上限 120 万円まで補助されるメニューもあり、DIY と業者施工を組み合わせれば自己負担を半減させることも可能です。 また、製品選定では補助金対象の断熱材か否かを確認するようにしましょう。 補助金について詳しく知りたい方は「【大型補助金ラストイヤー】2025年断熱リフォームで活用できる補助金を完全解説!最大260万円支給も!」をご覧ください。 断熱性能を数値で読むコツ カタログで見かける λ(ラムダ値)は熱伝導率、R 値は熱抵抗を示します。R 値=厚み(m) ÷ λ で計算できるため、異なる材料を比較するときは λ だけでなく厚みとセットで確認すると判断を誤りません。さらに部位別に必要な R 値の目安を把握しておくと計画が立てやすく、たとえば寒冷地で壁は 2.7 ㎡·K/W、天井は 4.0 ㎡·K/W 以上を目指すと快適性向上を実感しやすいと言われています。 DIYで使える断熱材の種類と選び方 断熱材は大きく「発泡プラスチック系」「ミネラルウール系」「天然素材系」の三系統に分類できます。断熱性能だけを見れば発泡プラスチック系が優勢ですが、耐火性や調湿性、コスト、作業難易度など複数の軸で比較し、自分のスキルと目的に最適なものを選ぶことが肝心です。 発泡プラスチック系:スタイロフォーム・ウレタン 引用:写真AC 押出発泡ポリスチレン(スタイロフォーム)は熱伝導率 0.028〜0.034 W/m·K と高性能。ボード状で加工が容易、しかも吸水率が低いので床下や基礎内側に使うと効果的です。隙間なくはめ込むためにカッターの刃をこまめに替え、断面をまっすぐに保つのがコツです。 硬質ウレタンフォームはさらに低い0.020〜0.024 W/m·K を誇り、狭い壁厚でも十分な断熱効果を得られます。ボード状と現場発泡タイプがありますが、現場発泡は吹付機械と化学薬剤を扱うため専門業者向け。DIY ではボードタイプを選び、ジョイント部をボンドで充填して熱橋を減らすとよいでしょう。 ミネラルウール系:グラスウール・ロックウール 引用:写真AC グラスウールは石英ガラスを高温で繊維化したもので、価格と性能のバランスが取れています。16K 製品の場合、120 ㎜厚で熱抵抗値 3.0 ㎡·K/W 前後を確保できます。カット面から細かい繊維が飛散するため、屋内施工では養生を徹底しましょう。 ロックウールは玄武岩などを原料とし、耐火性と吸音性が優れるため、寝室や書斎など静粛性を高めたい部屋に適しています。密度が高めで重量があるため、天井裏へ一気に敷き込む際はふたり作業が安全です。 天然素材:セルロースファイバー・羊毛 新聞紙を再パルプ化して防火処理したセルロースファイバーは、調湿性能の高さが魅力です。壁内の湿気を吸放湿することで断熱性能低下を抑え、カビの発生も防ぎます。袋入りマットは DIY 向けですが、吹き込み用セルロースファイバーは専用ブローイング機が必要になるため、業者併用を検討してください。 羊毛断熱材はウール特有のクリンプ構造で空気を多く抱え込み、自然由来で肌触りも柔らかいので天井裏作業で快適です。価格はグラスウールの2〜3倍ですが、廃棄時に焼却可能で環境負荷が小さい点も人気の理由です。 価格&入手先(ホームセンター・ネット通販) 材料を一括購入するときは、ホームセンターのカットサービスや無料トラック貸出を活用することで配送コストを抑えられます。反対に少量で済む補修用途なら、ネット通販でサイズカット済みキットを取り寄せる方が無駄がありません。リフォーム用の薄型ウレタンボードや羊毛マットはオンライン限定商品も多いので、複数ショップを比較してみるのもポイントです。 材料系統 熱伝導率(W/m·K) 適している部位 コスト指標* 扱い難易度** 押出発泡ポリスチレン 0.028〜0.034 床下・基礎立ち上がり ★★☆☆☆ ★★★☆☆ 硬質ウレタンボード 0.020〜0.024 壁・屋根 ★★★☆☆ ★★★★☆ グラスウール16K 0.038〜0.040 壁・天井 ★☆☆☆☆ ★★☆☆☆ ロックウール 0.035〜0.037 防火区画・防音目的 ★★☆☆☆ ★★★☆☆ セルロースファイバー(袋) 0.040〜0.043 天井・壁・床下 ★★★★☆ ★★★★☆ 羊毛マット 0.035〜0.039 天井・壁 ★★★★☆ ★★☆☆☆ * ★が多いほど高価 / ** ★が多いほど技術・体力が必要 表の読み方と選定のコツ コスト重視なら、壁をグラスウール、床下をスタイロフォーム、天井をセルロースファイバーで組み合わせると費用対効果が高い。 メンテナンス性重視なら、ロックウール+羊毛で後からの改修が楽になる。 環境配慮型なら、セルロース+羊毛で廃棄時の再資源化ルートを確保。 部位別・初心者でもできる断熱DIYの手順 天井グラスウール:敷き込みのコツ STEP1:下見と清掃で「素の屋根裏」を整える 点検口を開けると、天井板や既存断熱材の上にほこりが積もり、隙間から木くずが落ちていたり、小動物の糞などが落ちているケースもありますす。まずは熱をもちにくい LED ライトで梁の位置を把握し、ブロワーや掃除機でゴミを吸引。無断熱の場合、最初にこの“下準備”をしっかり行うことで後から敷くグラスウールが沈みにくくなり、厚みの均一化にもつながります。 STEP2:梁間寸法を測り、カット幅を「+10mm」に設定 梁(あるいは垂木)間の“内側寸法”をメジャーで測定し、その数字に 10 mm を足した幅でグラスウールをカットします。この 10 mm の“押し込み代”があることで、無垢の梁にもしっかりフィットし、経年でもズレにくい敷き込みが可能になります。長さ方向は 1,820 mm の既製グラスウールをそのまま使うか、梁ピッチに合わせて 910 mm で半裁するかを現場で決めましょう。 STEP3:1層目のグラスウール(100 mm)を梁間に差し込む 作業台で袋入りグラスウールをカットし、袋を破らないよう刃を寝かせてスッと切ります。敷き込むときは手前から奥へ、室内側がアルミガラスクロス(防湿面)になる向きで梁間に差し込み、表面が梁天端より 5 mm ほど高くなる“ふんわり感”を残すのがポイントです。 STEP4:2層目を直交させて重ね、隙間と熱橋をまとめてカバー 2層目(同じく 100 mm)を1層目と直交する方向に敷き込みます。上下のジョイント位置がずれることで梁に沿った熱橋が断ち切られ、さらに1層目で入り切らなかった微細な隙間を自然に覆い隠せます。仕上がり厚さは合計 200 mm。無断熱の屋根裏が、現行省エネ基準を大きく上回る断熱層へ早変わりです。 STEP5:点検口まわりと設備機器のクリアランスを整え、厚みを計測 最後に点検口周辺 600 mm ほどはレーキで均し、蓋がスムーズに閉まるか確認します。ダウンライトや電気ボックスの上には防熱カバーを載せ、グラスウールが直接触れないようにすると安全です。深さゲージやスケールを数カ所に挿して、設計厚さ(200 mm)を満たしていることをチェックしたら完了。 ワンポイントアドバイス 夏場の屋根裏は 40 ℃ を超えることもあるため、外気温が低い朝一番か秋〜春に作業すると楽です。 梁間寸法に微妙なばらつきがある場合は、幅+10 mm を目安に「少し大きめにカット → 押し込んで密着」する方が、後から縮んでも隙間になりにくくなります。 未施工だった天井裏に 200 mm のグラスウール層を追加するだけで、夜間の室温低下が緩やかになり、暖房を切った後の冷え込みが大幅に軽減します。初めての方でもステップ通りに進めれば難易度は高くありません。 床下押出発泡ポリスチレン敷き込み:防湿シートと根太間施工 STEP1:床下点検と採寸 床下収納庫または点検口から侵入し、根太間寸法と高さをメジャーで測定。水道管や電線の位置もメモして材料カット時の干渉を防ぎます。 STEP2:防湿シート敷設 地面にポリエチレンシートを敷き詰め、重ね代は 300 ㎜、テープ接合で湿気の上昇を抑制します。シート端部は基礎立ち上がりに折り上げておくと効果的です。 STEP3:断熱材カットと固定 押出発泡ポリスチレンを根太間寸法+5 ㎜でカットし、両端をわずかに面取りして差し込みやすくします。差し込んだあとは根太裏面に樹脂製ホルダーを等間隔でビス留めし、万一の浮き落ちを防止。寸法ばらつきが大きい場合はグラスウールマットをタコ糸でジグザグに編む方法も有効です。 STEP4:シートで包み込む 断熱材を固定したら、透湿防水シートを根太にタッカー留めして“袋”状にすることで、断熱材をホコリ・虫・小動物の侵入や落下から守ります。金具類の露出で手を傷つけないよう注意してください。(床下換気口や基礎断熱の仕様によっては、透湿防水シートでも不要な場合があるので、既存仕様を確認してから採用を判断してください。) ワンポイントアドバイス 退出動線を先に計画する 敷き込み作業は「奥から手前」へ進め、最後に点検口付近の1枚をはめ込む段取りにすると、狭い床下を何往復もせずに済みます。 膝と腰の保護を最優先に ニーパッド+軽量折りたたみ座板があるだけで作業姿勢が安定し、カット精度もアップ。長時間の匍匐前進による腰痛を防げます。 湿度計を持ち込んで仕上がりをチェック 施工後に床下湿度を測り、65%以下で安定していれば防湿シートが機能している証拠。数日後にもう一度確認すると安心です。 壁内充填:防湿シートと石膏ボードの戻し方 STEP1:開口と既存断熱材の状態確認 改修箇所の石膏ボードを間柱位置でカットし、既存断熱材を取り出します。断熱材がヘタって空隙ができている場合は全面入れ替えが望ましいです。 STEP2:新しい断熱材の充填 グラスウールを間柱幅+10 ㎜でカットし、上下方向に隙間ができないよう丁寧に押し込みます。袋入り品を使う場合は防湿層が室内側になるよう向きを確認してください。 STEP3:防湿シートの施工 室内側表面を防湿シートで覆い、シワが寄らないようにタッカーで 150 ㎜ピッチを目安に留めます。電気ボックス部分はシートをコの字に切り欠いて折り返し、背面でテープ留めすると破れを防げます。 STEP4:石膏ボード復旧とパテ処理 元の石膏ボードまたは同厚品を所定位置にビス留めし、ジョイント部をパテ処理。完全乾燥後にクロスを貼り直せば施工完了です。 ワンポイントアドバイス 石膏ボードの切り口を “45°の面取り” に STEP1 でボードを外す際、カットの角を 45° に面取りしておくと、復旧時に段差が出にくく、パテの厚盛りを抑えられます。 斜めにカットしているため、ビスが効きやすく、強度もアップ。 面取り分だけ開口がわずかに広がるので、断熱材を押し込みやすくなるメリットもあります。 窓まわり:内窓・シーリングで冷気を遮断 STEP1:採寸と下地確認 既存サッシ枠の左右・上部・下部を3点ずつ計測し、最小寸法を製品サイズに適用します。また、額縁奥行きが不足する場合はふかし枠を別途準備しましょう。 STEP2:内窓フレーム仮組み 届いた製品を室内で仮組みし、戸車や戸先金物に緩みがないか点検します。 STEP3:フレーム取り付け 窓枠に添え木を当て、ドリルで下穴を開けてから付属ビスで固定。歪みがないか水平器で確認し、必要なら樹脂シムをかませて調整します。 STEP4:障子建て込みとすき間充填 内窓障子を建て込み、スライド動作がスムーズか確かめたら、外窓フレームの目地を変成シリコンで充填。冷気侵入を減らし、ガラス面の放射冷却も抑えます。 STEP5:内窓後の結露ケア 室内湿度が高い場合は吸湿性カーテンを併用し、余剰水蒸気を布が一時的に吸収することでガラス面の水滴を抑制できます。 ワンポイントアドバイス 「対角寸法」と「水平器」のダブルチェックで“ひずみゼロ”に STEP 1 の採寸で左右・上下を測ったら、対角線(対角 A/対角 B) も必ず測定し、2 mm 以上差があれば木片スペーサーで下地を補正してから取付へ進みます。 フレーム固定後に水平器だけでなく「対角 A=対角 B」をもう一度確認すると、ガラスの気密ラインが均一になり、障子の開閉抵抗が軽くなるうえ結露もしにくくなります。 「ここまで DIY」「ここからプロ」判断チャート DIYで済むケースと注意すべき危険作業 床下高さが 400 ㎜以上ある、壁の中に筋交い金物が少ない、天井裏に気軽に立ち入れる──これらの条件がそろえば、ほとんどの断熱工事を安全に DIY で完結できます。しかし、屋根の野地板直下にアクセスする必要がある、重い断熱材を二階から搬入する、配管や電線が複雑に交差しているといったケースは転落・感電のリスクが高く、プロの技術と機材を借りた方が結果として早く安く済む場合があります。 予算・時間別シナリオ(窓DIY・窓+天井DIY・床下プロ) プラン 施工範囲(壁を除く) 想定コスト* 所要時間 ① 窓DIY (約11 万円) 樹脂内窓キット×2 カ所+シーリング打ち直し 約11 万円 (内窓 8.5〜9.5 万+副資材 1.5 万+工具・雑費 1 万) DIY 1 日 ② 窓+天井DIY (約18 万円) ①の内容 +天井 60 ㎡にグラスウール16K 100 mm×2 層(計 200 mm) 約21 万円 (内窓 11 万+GW 材料 9 万+副資材 1 万) DIY 3 日 (窓 1 日+天井 2 日) ③ 床下プロ (約60 万円) 床下 60 ㎡をセルロースファイバー吹込み〈プロ施工〉 約60 万円 (床下セルロース 54〜60 万/9千〜1万×60 ㎡) プロ 1 日 * 資材単価:2025 年・首都圏〜中部エリア相場内窓:W1700×H1200 標準サイズ換算 グラスウール:100 mm×430 mm×1370 mm 袋入りマット セルロース吹込み:養生・材料・施工・ 9,000〜10,000 円/㎡ —(産廃処理費含まず) こう選ぶと失敗しにくい まず窓だけで体感をチェック10 万円前後で効果が実感できれば、次のステップへのモチベーションが上がります。 天井は“グラスウール2層直交敷き”でコスパ確保材料が軽く、カッターだけで加工できるため初心者でも厚み 200 mm を確保しやすい。 床下は安全第一でプロに任せるほふく前進+ホース吹込みは体勢が過酷。コストは高くなるが、隙間なく充填されるため暖房費削減効果が大きい。 プロに依頼する場合の見積もりでチェックすべき5項目 使用断熱材の熱伝導率と厚み 厚みだけでは断熱性能を判断できないため、熱伝導率 (λ値) も必ず確認しましょう。 同じ100 mmでもλが0.038 W/m·Kの一般品と0.032 W/m·Kの高性能品では約20%も断熱効果が違います。見積書に「厚みと材質名」だけが記載されていると、性能の低い材料にすり替わっても気づきにくいので、「厚み×λ値=R値」を比較できる情報を必ず求めることが重要です。 施工範囲と面積の積算根拠 図面や現場採寸に基づく面積表を提示してもらい、どこからどこまで施工するのかを数値で確認する。根拠が曖昧だと数量が水増しされても判断できない。 既存仕上げ材の撤去・復旧方法と費用 解体手順・使用する仕上げ材のグレード・復旧範囲を事前に明示させる。ここが不透明だと「追加工事」として後から請求が膨らみやすい。 産業廃棄物の処理費用と委託先 廃材の運搬・処分費を見積り内で独立項目にし、マニフェスト発行業者名を示してもらう。処理先が曖昧だと不法投棄リスクを負うことになる。 工事中の室内養生と清掃サービスの有無 家具や床を汚さないための養生範囲と、工事後の室内クリーニングを含むかを確認。含まれていない場合は自分で清掃する手間と追加費用を見積もっておく。 断熱DIYの成功事例&失敗談 <成功事例> 天井+窓を改修した木造戸建(築28年)国土交通省「部分断熱等改修実証事業」の戸建て事例では、天井200 mm相当の断熱補強と内窓設置を行った結果、真冬早朝6時の最低室温が 改修前16 ℃→改修後21 ℃前後 に上昇しました。暖房停止中のグラフでも温度降下が緩やかになり、夜間に暖房を切っても起床時に20 ℃前後を維持できています。 (引用元:国土交通省「部分断熱等実証委員会」より) <成功事例> 内窓だけで電気代を年2.5万円削減したケース埼玉県川越市の実測レポートでは、南北2カ所の窓を YKK AP「プラマードU」に替えただけで 月間約50 kWh(≒2,000円) の使用量低減を確認。年間換算で 約25,000 円 の節約となり、材料+施工費約15万円でも 6年弱で元が取れる 試算です。 (引用元:https://door-reform.jp/blog/34277.html) 失敗談:熱欠損や怪我を招いた原因と対策 最も多い失敗は断熱材を小さく切り過ぎて隙間が生まれることです。特に壁内充填では間柱幅より 10〜15 ㎜ 広めにカットするのが鉄則ですが、採寸を面倒がって現物合わせにしてしまい、僅かな隙間から熱橋が生じてしまうケースが後を絶ちません。 また、床下での作業中に木材の角で手を切る・束石に頭を打つなどの怪我事例も報告されています。厚手のニーパッドとインナーヘルメットを着用し、移動は周りをよく見て進むことでリスクを大幅に減らせます。 プロからのアドバイス&地域コミュニティ 最近では動画やSNS、ブログなどで、プロやプロ顔負けの一般ユーザーさんが断熱DIYについて発信したりしていますので、そのような情報も参考になると思います。また県や市町村、ホームセンターなどが主催するDIY 講習会ではリアルに体験しながらコツを学べるため、初期投資としては最も効率的です。さらに SNS コミュニティに参加すれば、同じ規模・同じ年代の住宅で実践した仲間からリアルタイムでアドバイスを得ることができ、失敗を未然に防げます。 <過去に長野県が主催して開催された断熱DIY講習会> 以上、断熱 DIY の基礎知識から具体的な手順、判断チャートまで一気に解説しました。ご自宅の改修計画は今日この瞬間から始められます。まずは最も効果の大きい窓か天井のどちらかを決め、次の休日に材料の採寸と工具チェックを行いましょう。その小さな一歩が、これからの毎日をじわりと温かく、夏はぐっと涼しく変えてくれます。