【長野県】セルロースファイバーで非破壊断熱

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【長野県】セルロースファイバーで非破壊断熱

断熱材の効果が半減!?「気流止め」の重要性と対策を解説!

執筆者

Yanagisawa Naoki
気密測定技能者・しろあり防除士・WEB解析士
2007年に日本でセルロースファイバー断熱工事のパイオニアであった、有限会社信濃ビケン(長野市)に入社。セルロースファイバーの施工職人として従事。2012年に株式会社テオリアランバーテックに統合され、入社から10年以上で約2000棟以上のセルロースファイバー断熱工事や気密測定技能者の経験を経て、現在は断熱・気密に関する正しい情報を発信するため活動している。

1. 信州の家が「とにかく寒い!」本当の理由は壁の中にあった

長野県は快晴の日が多く、一見すると冬も日差しで暖かそうに見えます。しかし夜になると放射冷却が一気に進み、長野市の2021年~2024年 1 月平均最低気温は ‑4.5℃、標高 900 m を超える軽井沢町では ‑8.2 ℃ まで下がります。しかも日中と夜間の寒暖差は 25 ℃超 になることも珍しくありません。

こうした環境下では、築 20〜30 年の木造戸建てが当時の省エネ基準(断熱等級 2 相当)で建てられていても、

  • 断熱材が薄い
  • 施工時に細かな隙間が所どころに残っている
  • 経年で断熱材が落下・沈下・欠損している

という三重苦に陥りがちです。

落下しかけている断熱材(撮影:株式会社テオリアランバーテック)

壁の中では暖められた空気が上昇し、外壁側で冷却されると下降します。この 壁体内対流 が続くかぎり、断熱材は“冷却フィン”のように熱を奪われ、暖房を強めても足元がスースー冷える現象が起こります。

1‑1. 壁体内対流を数値で理解する

外気 0 ℃・室温 20 ℃ の試験条件で、グラスウール 16K 100 mm に 3 mm の隙間を設けると熱貫流率(U 値)が 最大 32 % 悪化した。これは(一社)住宅性能評価・表示協会が 2023 年に公表した実験結果です。断熱材が分厚くても内部で空気が動けば性能は激減します。

1‑2. 気流止めは「静止空気」を仕込む技術

壁体内の対流経路を物理的に遮断し、断熱材を 静止空気 で満たす工事を総称して気流止めと呼びます。隙間が数ミリでも効果は大きく、

  • 壁面温度が 2〜3 ℃上昇
  • 室温の上下ブレが小さくなる
  • 暖房設定温度▲1 ℃(エネルギー約 10 %削減)

などの効果が実測でも確認できます。小さな投資で大きく効く処方箋です。


2. 気流止め・断熱工事・気密施工──似て非なる三つの役割

工種 主目的 施工範囲 効果指標 施主メリット
断熱工事 熱を通しにくい層を厚くする 外皮全面 R 値/U 値 冷暖房負荷削減・表面結露抑制
気流止め 壁体内対流を遮断 壁・床・天井内部 壁面温度・運転時間 足元冷え解消・断熱材性能維持
気密施工 外皮を空気バリアで包む 建物全周 C 値 すきま風ゼロ・計画換気安定

注意: 気流止めは壁内対流を止める工事であり、家全体の C 値を直接達成するものではありません。C 値を確実に下げたい場合は別途気密施工が必要です。


3. 壁体内対流を放置するとどうなるか──五つの深刻な負の連鎖

  1. 断熱性能が最大 30 %低下(出典:一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)
    一般社団法人住宅性能評価・表示協会が2023年に公表した試験結果では、グラスウール16K・厚さ100 mmの試験体にあえて3 mmの隙間を設け、熱貫流率(U値)を測定しました。その結果、隙間がある場合にはU値が最大で32 %悪化し、断熱性能が約30 %低下することが確認されています。
  2. 結露・黒カビ・腐朽菌の蔓延
    壁体内に冷たい空気が溜まると、断熱層の裏側で水蒸気が冷やされて水滴(結露)になります。この結露水を栄養源にして、まずは黒カビが発生し、そのあと湿った木材を栄養に腐朽菌(木材を分解する菌)が繁殖します。こうした菌類が広がると、健康被害や構造材の強度低下を引き起こし、住宅の寿命を大きく縮めてしまいます。
  3. 光熱費が毎シーズン 1〜2 割増(※出典:一般社団法人HEAT20)
    一般社団法人HEAT20の報告によると、旧省エネ基準の住宅に比べ、G1等級の住宅では1・2地域で年間暖房負荷を約20%低減できます。逆に言えば、同等の断熱・気流止め対策を施していない住宅では、暖房負荷(ひいては光熱費)が約1~2割増加することになります。
  4. アレルギー・喘息など健康リスク上昇
    壁内結露でカビやダニが増えると、胞子やフンが空気中に舞い、呼吸すると気管に炎症を起こします。その結果、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどのアレルギー症状や、気管が狭くなる喘息発作のリスクが高まります。
  5. 構造材の寿命短縮で資産価値急落
    壁内に結露が続くと、構造材の含水率が上がって腐朽菌やシロアリの被害が進み、柱や梁の強度が低下します。その結果、住宅の耐用年数が短くなり、修繕コストも跳ね上がるため、市場での中古価格や資産価値が大きく下がってしまいます。

4. 気流止めの四大工法と判断基準

4‑1. 袋入り断熱材のU字折り込み

低コストで床下や梁周りに最適。防湿フィルムを室内側へ向け、折り返し長さを均一に。

4‑2. 気密テープによる点封止

筋交い交差部・配線貫通部など局所の隙間をアルミ基材テープで十字貼り。DIY 向き。

4‑3. 乾燥木材+発泡ウレタン併用

妻壁・根太間など大開口を面で塞ぎ、ウレタンで止気・止水。耐震補強と同時施工でコスパ大。

4‑4. 先張り気密シート

スケルトンリフォーム時に採用する最上位手法。シート重ね 100 mm、専用テープでジョイントし C 値 0.3 ㎠/㎡ クラスも狙えます。


5. 気流止め前に行う「現状診断」と「効果測定」のすすめ

5‑1. 着工前診断で行う四つのチェック

  • 赤外線サーモ撮影で温度ムラを可視化
  • 煙試験で漏気経路を発見
  • 壁内ファイバースコープで断熱材沈下を確認
  • 温湿度ロガーで露点越え時間を測定

5‑2. 施工後に行う効果測定

  • 再サーモ撮影で温度ムラが解消したか比較
  • 暖房運転時間ログの取得
  • 電力・灯油使用量を前年同月と比較
  • 室内 CO₂ 濃度と換気量で気密バランスを確認

6. 公的データとシミュレーションで分かる気流止めの効果

出典 試験・モデル 気流止め前 気流止め後 改善幅
住宅性能評価・表示協会 (2023) 16K100 mm 壁体試験 U = 0.57 W/㎡K U = 0.39 W/㎡K ‑31.6 %
国総研モデル住宅 (寒冷地) 年間暖房負荷 9,850 MJ 7,950 MJ ‑19.3 %
HEAT20 G1 モデル 壁面平均温度 14.2 ℃ 17.3 ℃ +3.1 ℃
北方住宅振興協議会 冬季結露発生時間 112 h 48 h ‑57 %

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 気流止めだけで家全体の気密は確保できますか?
いいえ。C 値を確実に下げるには外皮全体を包む気密施工が必要です。

Q2. DIY で必要な道具は?
タッカー、アルミ基材テープ、1液発泡ウレタン、赤外線温度計、防護具。冬季はプライマーも。

Q3. 点検サイクルは?
気密テープの耐久性を考慮し、5 年ごとに床下・小屋裏をサーモで確認すると安心です。

Q4. 換気システムとの相性は?
気流止め単体では影響しませんが、同時に気密施工を行い C 値 1.0 ㎠/㎡以下を確保すれば第 1 種・第 3 種どちらも設計通りに動きます。


8. 施工前セルフチェック7項目

  1. 冬に壁や床へ手を当てると冷気を感じる
  2. クロスの継ぎ目に黒ずみや剝がれがある
  3. 押入れがかび臭い、布団が湿る
  4. 小屋裏合板に白い結晶が付く
  5. 床下点検口から冷気が漂う
  6. 冬の光熱費が月 3 万円超
  7. 給気口から結露水が垂れる

3 項目以上当てはまれば壁体内対流の可能性が高いと言えます。


9. 補助金・減税を賢く使う四ステップ

断熱工事とセットで気流止め施工を行う場合、国や県の補助金が受けられる可能性があります。

  1. 断熱工事会社やリフォーム工事会社に事前相談(着工 3 か月前)
  2. 補助金情報+見積書を取得
  3. 交付申請→決定後に着工
  4. 完了報告で 1〜2 か月後に入金

長野県の信州健康ゼロエネ住宅助成金はリフォーム工事に対して総工事費の20%または上限 50 万円の補助金が狙えます。

補助金について詳しく知りたい方は「【大型補助金ラストイヤー】2025年断熱リフォームで活用できる補助金を完全解説!最大260万円支給も!」をご覧ください。

10. 施工後に後悔しないメンテナンス計画

完成後でも主な気密テープ施工箇所は点検口や視覚的診断で確認・補修が可能です。以下のサイクルでメンテナンスを行い、気流止め効果を長期維持しましょう。

  • 5年目:床下・小屋裏の点検
    • 床下点検口から土台まわりのテープ剥がれを目視・触診
    • 小屋裏点検口から天井取り合いのテープ浮きをチェック
    • 異常があれば同種テープで浮き回収・貼り増し
  • 10年目:配線・配管貫通部の点検
    • コンセント/スイッチボックスを外して内部のテープ密着状態を確認
    • 換気ダクト・給排水管貫通部も点検口から漏気跡を探し補修
    • 必要に応じてシーリング材併用で気密ラインを再構築
  • 15年目:気密テープの全面更新
    • 耐候性の限界に達するので、床・壁・天井の主要6箇所(基礎天端・根太間・天井取り合い・筋交い交差部・配管貫通部・窓台/窓頭)を順次全面貼り替え
    • 更新時に赤外線サーモチェックを併用すると、隠れた気密不良も補修可能

これらを定期的に行うことで、壁体内対流の再発や結露リスクを抑え、施工時の気流止め・気密効果を30年以上持続させることができます。

11. まとめ──「静止空気」は最高の断熱材

壁の中を動く空気を止め、断熱材が本来持つ力を100 %引き出す――それが気流止めです。

  • 壁面温度+2〜6 ℃で体感温度大幅アップ
  • 暖房エネルギー10〜20 %削減
  • カビ・結露・構造劣化リスクを同時抑制

「家全体を壊す大工事は避けたい」
「でも次の冬こそ快適に過ごしたい」
そんな信州のご家庭にとって、気流止めは実践的かつ費用対効果の高いソリューションです。

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