底冷えの原因と効果的な対策|窓・床下から考える断熱改善ガイド 公開日:2025年11月4日/更新日:2025年11月4日 監修者斎木 守 住宅省エネアドバイザー/第二種電気工事士/しろあり防除士 三重県出身。学生時代は長野県で農業・畜産を学び、地域のコミュニティ活動にも積極的に参加。寒さには人一倍敏感で、自身も松本市で築30年の木造住宅に暮らし、経験を踏まえて長野県の断熱性能向上を支援しています。YouTube「テオリアチャンネル」でも活躍中。新築・リフォームを含め、これまでに1,800棟以上の断熱工事に携わっています。 冬になると「暖房をつけても足元が冷たい」「朝起きると床がひんやりしてつらい」と感じる方は少なくありません。こうした状態を一般的に「底冷え」と呼びます。部屋全体の温度はそこそこ上がっているのに、足先や下半身が冷える現象です。 底冷えは、築年数が古く断熱性能が十分でない住宅や、床下や窓からの冷気が入りやすい構造の家で特に起こりやすい傾向があります。底冷えは快適性を損なうだけでなく、長期的には健康リスクにもつながります。 本記事では、底冷えの主な原因と部位別の特徴、応急対策から根本改善までの方法を具体的に解説します。 目次 Toggle 底冷えとは何か?底冷えを感じやすい住まいの特徴底冷えの主な原因を部位ごとに分析窓まわり:冷輻射・すきま風・結露床下:断熱材不足や隙間風天井・小屋裏:暖気の逃げ間取り・換気:無暖房空間との温度差自分でできる応急的な底冷え対策厚手カーテン・断熱カーテンで窓際の冷気を抑えるすきま風対策グッズを使うラグやカーペットを敷く断熱シート・アルミマットを活用するDIY底冷え対策の比較表応急対策の限界根本から改善する断熱リフォームの選択肢窓対策:内窓の設置で断熱・気密を高める床下断熱:非破壊施工で足元の冷えを改善部位別の費用相場と施工日数の目安部位別の費用・工期・効果目安(一般的なケース)費用と効果の考え方【補助金活用】実質負担額は?実質負担額のイメージ補助金を活用する際の注意点実際の改善事例から見る効果安曇野市H様邸底冷え改善に向けてできる次のステップ 底冷えとは何か? 冬の寒さの中でも「部屋は暖まっているのに足元だけ冷える」という不快感を覚えたことはありませんか。 これがいわゆる底冷えです。単なる気温の低さではなく、家の断熱性能や構造によって生じる独特の冷え方で、暮らしの快適さや健康にも影響を与えることがあります。 底冷えを感じやすい住まいの特徴 築20〜30年以上の木造住宅 当時の断熱基準が現在よりも緩く、床下や壁の断熱材が不足している場合が多い。 床下が屋外空間の住宅 床下換気口や隙間から冷気が侵入し、フローリングが冷たくなりやすい。 窓の断熱性が低い住宅 単板ガラスやアルミサッシが使われている家では、窓際から冷気が流れ込み足元を冷やす。 間取りに廊下や北側の部屋が多い家 無暖房空間と居室との温度差が大きく、体感的に「冷える」現象を助長する。 こうした条件が重なると、リビングで過ごしていても足先が冷えて体が温まらない、布団に入ってもしばらく寒い、といった生活の不快感につながります。さらに、長時間の底冷えは血流の悪化や関節のこわばりを招き、特に高齢者にとっては健康リスクにもなりかねません。 つまり底冷えとは、単なる「寒さ」ではなく、家の構造や断熱性能の不足によって生じる特有の冷え方なのです。これを理解することが、効果的な対策を考える第一歩になります。 底冷えの主な原因を部位ごとに分析 家の中が「なぜこんなに冷えるのか」を理解するためには、冷気の侵入経路や熱の逃げ場を整理することが大切です。底冷えは単一の原因ではなく、住まいの複数の部位が影響し合って起こります。ここでは、部位ごとに典型的な原因を見ていきましょう。 窓まわり:冷輻射・すきま風・結露 窓は住宅で最も熱が出入りする部位です。単板ガラスやアルミサッシでは外気の影響でガラス面が冷え、冷輻射やすきま風を感じやすくなります。結露が頻繁に起こることで、窓やカーテンにカビが繁殖し健康面にも悪影響を及ぼします。 また、特に注意したいのが「コールドドラフト」と呼ばれる現象です。これは、冷えた窓面で空気が冷やされ、床に沿って下降するため、足元が常に冷たく感じられます。暖房で室温を上げても窓際だけ寒いのは、この現象が原因です。 床下:断熱材不足や隙間風 床下は底冷えの大きな要因のひとつです。築年数の古い住宅では、床下に断熱材が入っていない、あるいは厚みが不足しているケースがよく見られます。その結果、冬の冷気が直接床面に伝わり、フローリングや畳がひんやりと感じられます。さらに、基礎の換気口や隙間から冷たい空気が入り込むと、暖房をしても足元だけ冷たい状態が続いてしまいます。 天井・小屋裏:暖気の逃げ 暖かい空気は軽いため、自然と天井付近に集まります。天井や小屋裏の断熱が不十分だと、その熱が外に逃げてしまい、部屋全体が暖まりにくくなります。結果として、床付近と天井付近で温度差が大きくなり、足元の冷えが強調されることにつながります。特に小屋裏の断熱材が薄い、あるいは隙間がある場合は熱損失が顕著です。 間取り・換気:無暖房空間との温度差 底冷えは家の構造的な要因にも影響されます。廊下やトイレ、脱衣所など、暖房が行き届かないスペースと隣接する部屋では、冷気が流れ込んで体感温度を下げます。気流の動きによって、居室内の暖かい空気が抜けてしまい、逆に冷気が足元へと流れ込む現象が起こりやすくなるのです。特に換気扇や給気口の配置によっては、冬場に「常に冷たい風を感じる」状況が続くこともあります。 このように、底冷えの原因は「床下・窓・天井・間取り」という複数の要素が重なり合って発生します。対策を考える際には、どの部位から改善すると効果的かを見極めることが重要になります。 自分でできる応急的な底冷え対策 底冷えを感じるとき、すぐにできる工夫として有効なのが「応急的な断熱」です。大規模な工事をせずに取り入れられるため、今すぐの寒さ対策として役立ちます。ただし、あくまで一時的な効果であり、根本的な解決にはつながりにくいことも理解しておきましょう。 厚手カーテン・断熱カーテンで窓際の冷気を抑える 窓は冷気の最大の侵入口のひとつです。厚手のカーテンや断熱性能のあるカーテンを使うことで、冷気の流入や冷輻射を緩和できます。床まで届く長さのカーテンを選ぶと効果が高まります。 すきま風対策グッズを使う 窓枠やドアのわずかな隙間から入る風を防ぐために、すきまテープやドラフトストッパーを取り付ける方法もあります。小さな工夫ですが、体感的な底冷えの軽減につながる場合があります。 ラグやカーペットを敷く フローリングは熱を伝えやすく、冬場は特に冷たさを感じやすい床材です。 その上にラグやカーペットを敷くことで、床からの冷気を遮り、足裏の体感温度を上げることができます。さらに、ウレタンや厚手の素材を選ぶと断熱性が高まります。 断熱シート・アルミマットを活用する ホームセンターやネットで販売されている断熱シートを床に敷く方法もあります。アルミ蒸着シートなどは、床からの冷気を反射し、床表面の冷たさを軽減します。 DIY底冷え対策の比較表 方法 費用感 持続性 デメリット 厚手カーテン・断熱カーテン 数千円〜数万円 3〜5年程度 窓そのものの断熱性は改善しない/結露は残る場合あり すきま風防止グッズ(テープ・ストッパー) 数百円〜数千円 半年〜2年程度 粘着力の低下や劣化が早い/根本的な解決にはならない ラグ・カーペットを敷く 数千円〜数万円 1〜3年(素材により異なる) 掃除がしづらい/ダニやカビの温床になりやすい 断熱シート・アルミマット 数百円〜数千円 1〜2年程度(劣化しやすい) 見た目が生活感に直結/耐久性が低い 応急対策の限界 これらの方法はいずれも「その場しのぎ」には有効ですが、以下のような制約があります。 効果が限定的:部屋全体を暖める力は弱く、根本原因は解決されない 耐久性に難あり:数年ごとの交換や頻繁なメンテナンスが必要 光熱費削減には直結しにくい:暖房効率そのものは大きく改善されない 応急対策は「今すぐ寒さをしのぐための一手段」として取り入れる価値がありますが、快適な住環境を長く保つためには、床下や窓の断熱リフォームといった抜本的な改善を視野に入れる必要があります。 根本から改善する断熱リフォームの選択肢 応急的な底冷え対策は「今すぐの寒さ」を和らげるには有効ですが、長期的に快適な住まいを実現するには限界があります。根本的に改善するためには、断熱リフォームによって冷気の侵入経路を遮断し、室内の熱を逃がさない仕組みを整えることが重要です。 ここでは、底冷え解消に特に効果的な「窓」「床下」の2つの部位に焦点を当て、それぞれの対策と効果を紹介します。 窓対策:内窓の設置で断熱・気密を高める 窓は住宅の中でも最も熱の出入りが大きい部分で、冬の暖房熱の約5割が窓から逃げるとも言われています。 内窓を設置することで、以下の効果が期待できます。 断熱性向上:窓が二重構造になることで、外気の冷たさを遮断。 気密性向上:すきま風の侵入を防ぐ。 結露防止:室内外の温度差を緩和し、ガラス面の結露を抑える。 Low-E複層ガラスを採用した内窓であれば、冷輻射を大幅に抑え、冬の窓際でも快適に過ごせるようになります。 床下断熱:非破壊施工で足元の冷えを改善 底冷えの原因として最も直接的なのが床下からの冷気です。築年数の古い住宅では、床下に断熱材がまったく入っていない、あるいは劣化して隙間ができている場合が少なくありません。断熱材を床下から施工する非破壊工法であれば、床を剥がさずに施工でき、生活への負担も最小限です。また、ひんやり冷たい合板フローリングから無垢床に張り替えるなど、床材の変更も併せて行うとより体感温度を上げるのに効果的でしょう。 床下断熱による効果の一例 施工前 施工後 床表面温度:1.7℃ 床表面温度:12.4℃ ※木造2階建て ※石油ファンヒーター設定温度20度 この事例では、施工前と比べて最大10℃もの温度差が確認されました。断熱施工後は、暖房が効きやすくなることで、ストーブやエアコンの設定温度を下げても快適に過ごせるようになり、電気代の削減にもつながっています。さらに、気流止めを併用することで隙間風を防ぎ、足元の寒さを根本から改善できます。 ▶気流止めとは このように、窓・床下の2カ所を優先的に対策することで、底冷えは大幅に改善されます。どの部位から手をつけるかは住宅の状態によって異なりますが、「窓 → 床下」の順に取り組むと効果が出やすいのが一般的です。 部位別の費用相場と施工日数の目安 断熱リフォームを検討する際に最も気になるのが「費用」と「工期」です。ここでは、底冷え対策に効果的な 窓・床下の2部位について、一般的な費用帯や施工日数の目安を整理しました。あくまで概算の目安ですが、検討の参考になります。 部位別の費用・工期・効果目安(一般的なケース) 部位 窓 床下 主な対策内容 内窓設置(Low-E複層ガラス推奨) セルロースファイバー吹込み+気流止め 費用目安(総額) 1ヶ所あたり 5〜20万円 32〜64万円(施工面積40〜80㎡想定) 工期 半日〜1日(数窓程度) 1日程度 効果の目安 コールドドラフトの抑制、結露防止、窓際温度の改善 床表面温度が+3〜10℃改善、足元の体感向上 費用と効果の考え方 窓対策は即効性が高く、補助金が充実している点も大きな魅力です。まずは窓まわりの改善から始める方も多いです。 床下断熱は「足元の冷え」に直結するため、底冷え改善を目的とするなら特に優先度が高い部位です。 こうした費用相場は、住宅の構造・施工面積・既存断熱の有無によって変動します。複数の部位を組み合わせて施工することで、より大きな効果を実感できるケースも多いため、全体的な住まいの状態を踏まえて検討することが大切です。 【補助金活用】実質負担額は? 断熱リフォームは「やりたいけど費用が心配」という方も多いと思います。その際に活用できるのが、国や自治体が実施している補助金や助成金制度です。代表的なものとしては、国の「先進的窓リノベ事業」や「子育てグリーン住宅支援事業」、各自治体が独自に行っている省エネ住宅改修支援制度などがあります。 実質負担額のイメージ 約35坪の住宅で床下断熱リフォームと内窓設置をした場合の、工事費用・補助金・実質負担額がどのくらいになるか見てみましょう。 工事代 補助金 1階床下 施工面積:64.5㎡ セルロースファイバー厚み:145mm 75万円 10.5万円 1階の窓 掃き出し2、腰高6 81万円 29.8万円 2階の窓 腰高9 57万円 25.2万円 総工事費 213万円 合計補助金額 65.5万円 実質負担額 147.5万円 ※内窓の仕様:Low-E複層ガラス、樹脂サッシ 総工事費213万円。補助金65.5万円を差し引き、実質負担額は147.5万円となります。 断熱リフォームは「今すぐできる工夫」の延長線上にあり、長期的な快適性と省エネ効果を実現する投資です。住宅の築年数や生活スタイルに応じて、また、補助金を活用してお得に最適な組み合わせを検討すると良いでしょう。 補助金を活用する際の注意点 ただし、補助金にはいくつかの注意点があります。 補助金制度には申請期限や対象製品、施工業者の登録要件があるため、事前に確認が必要です。 予算枠が埋まると受付終了になるケースもあるため、早めの検討が望まれます。 このように、補助金を上手に利用することで、断熱リフォームはより現実的で負担の少ない投資になります。費用面で迷っている方ほど、まずは利用できる制度を調べ、信頼できる業者に相談してみるのがおすすめです。 \おすすめの記事/ ▶【大型補助金ラストイヤー】2025年断熱リフォームで活用できる補助金を完全解説!最大260万円支給も! まずは「話だけ聞いてみたい」という方にも安心してご利用いただけます。 『無料の断熱診断』はこちらから:https://dannetsu-nagano.com/contact/ 実際の改善事例から見る効果 断熱リフォームは「本当に効果があるのか?」という疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。ここでは、実際に長野県内で断熱リフォームを行ったご家庭のビフォーアフターをご紹介します。 安曇野市H様邸 築28年の2×4住宅にお住まいですが、冬のつらい底冷えや夏の2階の暑さにお悩みでした。 床下と天井にセルロースファイバーを吹き込む断熱改修を実施しています。(窓の断熱対策は実施済み) BEFORE(床下) AFTER(床下) 施工前、床下は無断熱の状態。写真の奥に通気口(光がさしている部分)がありますが、ここから冷気が床下に流れ込み足元を冷やしています。 床下の断熱リフォームは、点検口から床下に潜り込み、床を剥がすことなく住んだままの状態で工事させていただきました。セルロースファイバー断熱材を140mmの厚さで充填しています。 BEFORE(天井) AFTER(天井) 天井にはマット状のグラスウールが施工されていましたが、劣化により断熱材を覆うシートが破れていたり、断熱材同士の隙間がある状態でした。これでは断熱材の効果が発揮されていません。また、断熱材の厚みも100mmと低断熱の状態でした。 これでは、冬に暖めた空気が上昇し天井から逃げてしまいます。また、夏の日差しで天井裏は60度を超えることもあります。天井の断熱性能が低いと熱が室内に伝わり、冷房効率が低下してしまいます。 セルロースファイバーは、細かな繊維が隙間を埋めていくため既存の断熱材(グラスウール)を活用し、220mmの厚みで施工しました。 ■ 断熱リフォーム費用と補助金 天井断熱 床下断熱 施工面積 約76㎡ 約84㎡ 概算費用 約390,500円 約876,000円 助成金 54,000円 168,000円 施工日数 1日 1日 ↓ 概算費用 合計 約1,266,500円 助成金 合計 222,000円 実質負担額 約1,044,500円 お客様の声 築28年の2×4の我が家。一応、ベタ基礎にはなっていますが、寒冷地にもかかわらず、床下に断熱材は入っていませんでした。薪ストーブを設置してあり、部屋全体は暖かくなるのですが、足元のスースーする寒さは続いていました。床下の断熱を考えていたところ、テオリアランバーテックさんで、画期的な工法があると知りました。断熱工事をやっていただいた最初の冬を過ごしましたが、薪の使用量が少なくなり、足元の寒さも改善しました。既存の住宅に床下断熱を考えているなら、おすすめです。 底冷え改善に向けてできる次のステップ 底冷えを根本から解決するには、まず「どこから冷気が侵入しているのか」「どの部位の断熱性能が不足しているのか」を正しく把握することが重要です。床下なのか、窓まわりなのか、あるいは天井から熱が逃げているのか――原因を明確にしないまま対策をしてしまうと、思ったほど効果が出ずに費用だけかかってしまうケースもあります。 そのため、最初の一歩は専門家による調査や診断です。床下や小屋裏を実際に確認し、窓の性能や隙間の有無を点検することで、適切な優先順位をつけた断熱計画を立てることができます。 また、国や自治体では「先進的窓リノベ事業」や地域独自の補助金・助成金が用意されている場合があります。これらを活用すれば、自己負担を抑えながら効率的に断熱リフォームを進められる可能性があります。ただし、制度によって対象工事や申請条件が異なるため、最新情報を確認することが欠かせません。 底冷えでお困りの方は、まずは専門家による調査でご自宅の冷えの原因を確認してみましょう。現状を正しく把握できれば、最小限の投資で最大の効果を得られる断熱対策が見えてきます。 『無料の断熱診断』では、以下のような項目をチェックします。 天井・壁・床の断熱材の有無や劣化状況 窓の断熱性能(単板/複層/アルミサッシ等)の確認 断熱リフォームの必要性とコストの目安 補助金を活用した費用の抑え方 まずは「話だけ聞いてみたい」という方にも安心してご利用いただけます。 『無料の断熱診断』はこちらから:https://dannetsu-nagano.com/contact/ 執筆者 Ikeda 寒さは苦手な夏生まれ女子。断熱・シロアリ・エクステリアを勉強中。 自身も新築の際には、断熱性・防音性などに惚れ込み、断熱材「セルロースファイバー」を選択しました。 ふわふわかわいい「セルロースファイバー」の情報、寒い住宅の原因や対策などなど・・・体もお財布も温める情報を発信していきます!