「エアコンがあるのに暑い?」室内熱中症の原因と防ぐための住まいの工夫 公開日:2025年6月16日/更新日:2025年6月19日 監修者斎木 守 住宅省エネアドバイザー/第二種電気工事士/しろあり防除士 三重県出身。学生時代は長野県で農業・畜産を学び、地域のコミュニティ活動にも積極的に参加。寒さには人一倍敏感で、自身も松本市で築30年の木造住宅に暮らし、経験を踏まえて長野県の断熱性能向上を支援しています。YouTube「テオリアチャンネル」でも活躍中。新築・リフォームを含め、これまでに1,800棟以上の断熱工事に携わっています。 「熱中症は炎天下で起こるもの」——そう思い込んでいませんか? 実は近年、救急搬送の約4割が自宅や職場などの“屋内”で発生しており、医学・防災の専門家は「室内熱中症」という新たな危険を警告しています。エアコンを付けていても、換気不足・気流の停滞・断熱性能の低さが重なれば、室温は知らぬ間に30℃を超え、湿度は60%以上へ――体は熱を逃がせず、めまいや頭痛、最悪の場合は意識障害に至ることもあります。特に在宅時間の長い高齢者や小さなお子さんがいるご家庭では、健康リスクが外出時と同等、あるいはそれ以上になるケースすら珍しくありません。 本記事では、こうした室内熱中症の実態をデータで紐解きながら、今日から実践できる予防策と、住まいを“暑さに強い家”へと変えるための手段を解説します。エアコン設定温度を下げるだけでは防ぎ切れない理由を理解し、体調不良と電気代の両方を賢く抑えるヒントになれば幸いです。 目次 Toggle 室内でも起こる熱中症:見過ごされがちなリスク室内熱中症とは?室内熱中症が起こる主な原因室内熱中症の発生状況と統計データなぜ家の中でも熱中症になるのか?エアコンの使い方と限界断熱性の低い住宅の問題点室内熱中症を防ぐための具体的な対策日常生活でできる予防策断熱リフォームの効果とメリット実際の事例紹介:断熱リフォームで快適な室内環境を実現天井断熱リフォーム弊社で扱う断熱材『セルロースファイバー』の特徴お得に断熱リフォームするためのアドバイス補助金や助成金の活用方法まずは、無料でできる“断熱診断”からはじめませんか? 室内でも起こる熱中症:見過ごされがちなリスク 室内熱中症とは? 高温多湿の環境下では、私たちの体は発汗と呼吸によって体温を一定に保とうとします。ところが、気温・湿度がともに高いと汗が蒸発しにくくなり、体内に熱がこもります。これが熱中症です。発生場所は屋外だけと思われがちですが、近年は住宅内での発症例が急増しています。 室内熱中症が起こる主な原因 室内熱中症は、エアコンを使用していても発症することがあります。ここでは、その主な原因について解説します。 主な原因 具体的な状況例 体温調節が妨げられるメカニズム 高温多湿 気温30℃・湿度60%以上の部屋に長時間いる 汗が蒸発せず、体内の熱がこもって体温が下がらない 水分不足 水をあまり飲まない/お茶やコーヒーばかり飲む 発汗で失った水分が補給されず、血流が悪化 → 体熱の放散が低下 運動不足 一日中ソファで過ごす/体を動かさず筋力が低下している 筋肉量が少ないと熱を生産・放散する能力が落ち、体温調節力が低下 体調不良 風邪気味/寝不足/持病がある(心疾患・糖尿病など) 自律神経が乱れ、発汗や血流調節がうまく働かない 高齢者や乳幼児 暑さ・渇きに気づきにくい/自分でエアコンや水分を管理できない 暑さへの感覚が鈍い・体温調整機能が未発達で、オーバーヒートしやすい 特に高温多湿の状況は、通気や気流の偏り・断熱や遮熱性の不足による影響が大きいと言えます。 これらの要因は重なり合うことが多く、「エアコンを使っているのに汗が止まらない」「夜間に頭痛や吐き気がする」といった症状につながります。とくに夕方から夜にかけては、屋外よりも室温が高い“蓄熱”状態になる住宅も珍しくありません。 室内熱中症の発生状況と統計データ 室内熱中症が見過ごせない理由は、実際の救急搬送データに裏付けられています。 2024年4月~8月の期間、全国を対象に熱中症で搬送された人数が最も多かったのが6月の43,195人です。(出典:総務省消防庁) このデータをもとに注意するべきポイントを見ていきましょう。 ①6月(梅雨時期)は8月に比べ3.8倍ほどの救急搬送数 6月に救急搬送の数が多いのは、体が暑さに慣れていない状態での気温上昇と、湿度が高いことに影響しています。 ②救急搬送の4割近くが住宅内 発生場所別では、17,638人(40.8%)が「住居」で発生しました。 ③高齢者が6割弱を占める 年齢別内訳では、65歳以上の高齢者が25,469人(59.0%)と最多。次いで18〜64歳が32.3%、7〜17歳が8.2%でした。 ④子どもも安全圏ではない 0〜17歳の乳幼児・少年が合わせて8.8%を占めています。発汗量が多く脱水しやすいため、体温調整が難しくなるのです。 これらの数字は「熱中症=屋外スポーツや炎天下の作業」というイメージが既に過去のものになりつつあることを示しています。特に高齢者や子どもが在宅時間を長く過ごす家庭では、屋内に潜むリスクを軽視できません。 ポイントまとめ 梅雨時期は気温がさほど高くない日でも湿度が高いため特に注意が必要 熱中症は「気温×湿度×換気不足」の三拍子がそろうと室内でも起こる 住宅内搬送が全体の約4割、高齢者が6割弱と最多 断熱・気流・遮熱の改善がない家では、エアコンを使っても室内熱中症のリスクは残る なぜ家の中でも熱中症になるのか? エアコンの使い方と限界 エアコンを「28℃設定」にしているのに汗が止まらない──そんな経験はありませんか。 これは設定温度と実際の室温が一致しないために起こります。エアコンが28℃設定でも場所や時間帯によって室温30℃を超えるエリアが生じることがあります。 ▶冷房は何度に設定すべき?28度説の真相と体感温度を快適にする方法 ギャップが生じる主因 具体例 影響 センサー位置の偏り エアコン真下の温度しか検知しない 室内平均を把握できず過冷却or冷却不足 気流の障害物 ソファや収納家具で冷気を遮断 部屋の隅に「熱だまり」が生じる 遮熱不足 南面窓からの日射で床・壁が高温 体感温度が設定値より 2~3℃高い 冷房をつけた時、冷たい空気は重く下降するため床付近から冷え始めます。壁や天井の温度を下げるのには時間がかかりますが、サーキュレーターで空気を循環させることで部屋全体が設定温度である28℃近くまで下げることができます。 つまり「エアコン=万全」ではなく、気流設計と熱負荷削減をセットで考えないと室内熱中症リスクは残るということです。 また、湿度についても併せて注意が必要です。前述の「救急搬送データ」から分かるように、気温がさほど高くない梅雨時期に熱中症になる方が多いのは、湿度の高さが影響しています。梅雨時期には、エアコンの除湿モードを利用する、除湿器を利用するなど、湿度を60%以上にしないよう調整することで室内熱中症のリスクを抑えることができます。 断熱性の低い住宅の問題点 もう一つ見逃せないのが住宅そのものの断熱・気密性能です。外気温を遮る力が弱い家では、昼の熱が壁や天井に蓄えられ、夜になっても放熱しません。その結果、エアコンを止めるとすぐ室温が上昇し、就寝中に熱中症を招くケースが報告されています。 外気温の影響を受けやすい構造 単板ガラスや無断熱の壁は、日射熱をそのまま室内に伝えます。特に午後3時以降は屋外より屋内の方が高温になる「逆転現象」が起こりがちです。 冷房効率が悪く、熱がこもりやすい 冷房で下げた温度がすぐ外へ逃げるため、エアコンはフル稼働でも体感温度が下がりません。結果として電気代が増え、夜間も切れない――という悪循環に陥ります。 要点 エアコン単独では「設定温度=安全」とは限らない 低断熱住宅は昼の熱を蓄え、夜間の熱中症リスクを高める 気流設計と断熱改修を組み合わせてこそ、室内熱中症は根本的に防げる 室内熱中症を防ぐための具体的な対策 日常生活でできる予防策 「エアコンはついているけれど、まだ暑い」「水分をとっているつもりでも頭がぼんやりする」。そんな日常の不安を減らす第一歩は、次の4つの行動を習慣化することです。 重点行動 実践のコツ 期待できる効果 ①こまめな水分補給 のどの渇きを感じなくても1日1.5〜2Lを目安に少量ずつ。カフェインやアルコールは利尿作用が強いので控えめに 体内の水分量を保ち、発汗による熱放散を助ける ②室温・湿度の見える化 リビングと寝室に温湿度計を設置し、28℃・湿度60%が近づいたら対策開始 「気づいたら高温多湿」を防ぎ、行動のタイミングを逃さない ③遮光・遮熱で熱を入れない 遮光カーテン・すだれ・外付けブラインドを南西面に設置。窓際の気温を2〜6℃下げる実験結果あり エアコン効率が上がり、体感温度を平均2℃程度低減 ④気流をつくる サーキュレーターで天井方向へ送風、室内の空気を循環 壁・天井の熱だまりを解消し、設定温度どおりの涼しさを実感 ポイントは“組み合わせ”。水分補給だけ、遮光だけでは効果が限定的ですが、複数対策を同時に行うと体感温度は大きく下がります。 また、熱中症予防情報サイトなどで、お住まいの地域の暑さ指数(WBGT)※ や熱中症警戒アラートが出ていないか確認をすることもおすすめです。 ※暑さ指数(WBGT)とは・・・熱中症の危険度を評価するための指標です。気温・湿度・日射 輻射熱の要素を総合して算出され、体への熱ストレスをより的確に反映しています。単位は気温と同じく「℃」で表し、WBGT21~25℃は『注意』、25~28℃は『警戒』、28~31℃は『厳重警戒』、31℃以上は『危険』、としています。 断熱リフォームの効果とメリット 「日常対策でしのげるのは今年だけかもしれない」と感じたら、住まいの性能そのものを底上げする選択肢があります。なかでも断熱リフォームは、室内熱中症対策だけでなく、夏・冬のエネルギーロスを同時に改善できる根本対策です。 室温の安定化 高性能断熱材で外壁・屋根・床を包むと、外気の影響を受けにくくなり、真夏でも室温のピークが約3~4℃下がる事例が多く報告されています。 夜間の“蓄熱”も抑えられるため、就寝中の熱中症リスクを大幅に削減できます。 冷房効率の向上 天井の断熱改修をした住宅では、施工前後で天井温度が-6℃になった事例もあります。(※当社施工事例より) 外気温に影響されにくくなったことで、エアコンの稼働時間が減少する、エアコンの設定温度を下げることができる、といった効果が表れています。 エネルギーコストの削減 冷房と暖房の両シーズンで電気代が下がるため、年間25%程度の光熱費削減が期待できます。補助金を活用すれば初期費用の回収も早まります。 まとめ 今日からできる4つの生活習慣(水分補給・気温と湿度の見える化・遮光と遮熱対策・気流をつくる)で即効対策 断熱リフォームは室温の安定と冷房効率アップで熱中症リスクを根本解決 実際の事例紹介:断熱リフォームで快適な室内環境を実現 天井断熱リフォーム 夏の2階の暑さにお悩みだったY様ですが、セルロースファイバー断熱材を200mm厚で断熱改修しました。 BEFORE 2017年5月22日 外気温:29℃ エアコン:25℃設定 天井温度:31.1℃ AFTER 2017年5月23日 外気温:30℃ エアコン:25℃設定 天井温度:25.3℃ 測定によると、改修前は天井の温度が31.1℃でしたが、断熱改修後25.3℃に変化しました。その差は-5.8℃です。 BEFORE AFTER 断熱改修後の生活の変化 – Y様より – リフォーム前は、温度ムラがあり部屋の場所によって暑い・冷房で寒いと感じることがありましたが、リフォーム後は部屋全体の温度が統一されたのか、部屋のどこにいても快適に感じます。 2階へ上がったときのモワッとした暑さによる不快感が軽減されました。エアコンの使用頻度も前より抑えられたように感じています。 ▶【夏のお家が暑い】2階が暑い原因と天井断熱の必要性(動画あり) ▶断熱リフォームの事例はこちら 弊社で扱う断熱材『セルロースファイバー』の特徴 断熱材にも種類がありますが、弊社ではセルロースファイバーを使用しています。 セルロースファイバーとは、新聞などの古紙を再利用しホウ酸を含ませた木質繊維系の断熱材です。 特性 詳細とメリット 高い断熱性 熱伝導率0.040W/mK程度で高性能グラスウールと同等以上。夏は外の熱気、冬は室内の暖気を逃がしにくい 調湿性能 木質繊維が湿気を吸放出し、壁内結露を抑制。実測では壁体内湿度が安定し内部結露を防いだとの報告 (J-STAGE) 環境負荷が小さい 原料の80% 以上がリサイクル古紙。製造時のCO₂排出も低く、サステナブル 防音・防火 高密度吹込みにより45dB以上の遮音、ホウ酸処理で準不燃にも対応 高い断熱性だけでなく、様々な効果を兼ね備えています。 詳しくはこちらの記事▶セルロースファイバー断熱材の魅力とは? – 特徴・他断熱材との違い・施工事例 – お得に断熱リフォームするためのアドバイス 補助金や助成金の活用方法 断熱リフォームは初期費用が大きいため、国の大型補助金+自治体独自の助成金を組み合わせると負担を大きく減らせます。代表的な制度をまとめると次の通りです。 制度名(2025 年度) 主な対象工事 補助上限額 申請者 備考 住宅省エネ2025キャンペーン― 先進的窓リノベ2025事業 高性能内窓・外窓交換・ガラス交換 200万円/戸 リフォーム事業者 予算枠に達し次第終了、先着順 (先進的窓リノベ2025事業) 住宅省エネ2025キャンペーン― 子育てグリーン住宅支援事業 断熱改修(天井・壁・床など)・開口部(窓・玄関ドアなど) 60万円/戸 リフォーム事業者 予算枠に達し次第終了、先着順(子育てグリーン住宅支援事業) 長野県 信州健康ゼロエネ住宅助成金 断熱改修(天井・壁・床など)・開口部(窓・玄関ドアなど) 140万円/戸 リフォーム事業者 予算枠に達し次第終了、先着順 (長野県公式サイト) ▶【大型補助金ラストイヤー】2025年断熱リフォームで活用できる補助金を完全解説!最大260万円支給も! まずは、無料でできる“断熱診断”からはじめませんか? 2025年は大型補助金を使って断熱リフォームをする最後のチャンスと言われています。工事や申請には時間がかかりますので、断熱リフォームを検討している方、気になる方は早めにテオリアランバーテックにご相談ください! まずは、ご自宅の断熱の状態を調査し、予算やライフスタイルに合わせた断熱リフォームプランをご提案いたします。 ご家族の健康と快適な夏のために、今すぐできることから始めてみませんか? ▶無料の断熱診断お申し込みはこちら 執筆者Ikeda 寒さは苦手な夏生まれ女子。断熱・シロアリ・エクステリアを勉強中。 自身も新築の際には、断熱性・防音性などに惚れ込み、断熱材「セルロースファイバー」を選択しました。 ふわふわかわいい「セルロースファイバー」の情報、寒い住宅の原因や対策などなど・・・体もお財布も温める情報を発信していきます!