【長野県】セルロースファイバーで非破壊断熱

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【長野県】セルロースファイバーで非破壊断熱

基礎断熱とは?メリット・デメリットと、家に合った断熱の考え方

執筆者

Yanagisawa Naoki
気密測定技能者・しろあり防除士・WEB解析士
2007年に日本でセルロースファイバー断熱工事のパイオニアであった、有限会社信濃ビケン(長野市)に入社。セルロースファイバーの施工職人として従事。2012年に株式会社テオリアランバーテックに統合され、入社から20年弱で約2000棟以上のセルロースファイバー断熱工事や気密測定技能者の経験を経て、現在は断熱・気密に関する正しい情報を発信するため活動している。

「最近の家は“基礎断熱”が主流って聞いたけど、うちもそうした方がいいのかな?」

そんな疑問を持って検索している方へ。
基礎断熱は、床下の空間を含めて家全体を断熱する考え方で、冬の底冷えを防げる一方、湿気やシロアリなどへの配慮が欠かせません。

ところが実際には、「基礎断熱にしたのに寒い」「思っていたほど暖かくない」という声もあります。
断熱そのものの仕組みだけでなく、気密・換気・施工環境など、家全体のバランスが関係しているのです。


目次

そもそも「基礎断熱」とは?床断熱との違い


べた基礎 × 内基礎断熱(引用:写真AC)

床断熱(引用:写真AC)

住宅の断熱は大きく「床断熱」「基礎断熱」に分かれます。
どちらも室内の熱を逃がさないための考え方ですが、「どこを室内と外気の境界(断熱ライン)にするか」が決定的に異なります。

床断熱と基礎断熱の基本

  • 床断熱:床下は外気扱い。
    床組の下側に断熱材を入れて、床で室内と外気を区切る工法。従来の木造住宅で一般的。
  • 基礎断熱:床下を室内扱い。
    基礎(コンクリート)の立ち上がりやスラブを断熱層とし、床下空間まで室内環境として含める工法。全館空調や床下エアコンと相性が良い。

【用語解説】スラブ:「スラブ」とは、建物の床や天井となる平らなコンクリートの板のことです。住宅では基礎の底面(底盤)や2階の床などに使われ、建物の重さを面で支える役割があります。つまり、家の“土台の床”や“階の板”のような部分を指します。

ひと言ポイント:基礎断熱は「足元の温度ムラが減りやすい」一方、湿気・シロアリ・夏型結露・点検性への配慮が必須です。

なぜ基礎断熱が普及してきたのか

  • 全館空調・床下エアコンとの親和性:家全体を均一な温度にしやすく、計画換気とも組み合わせやすい。
  • 高気密高断熱化の進展:外皮の連続性を確保しやすく、断熱ラインの欠損(熱橋)を抑えやすい。
  • 快適性への要求の高まり:冬の足元冷え・温度ムラの不満を抑え、ヒートショック対策にも寄与。
  • 設備・配管の合理化:床下を室内環境として扱えるため、配管・点検の動線設計がしやすい。
  • 寒冷地ニーズ:凍結リスクや外気温の厳しさに対して、床下の温度安定化が有効なケースが多い。

※ 普及の背景は地域性・事業者の設計方針によって差があります。採用時は防湿・防蟻・気密まで含めた総合設計が前提です。

「基礎の種類」と「断熱の位置」は別物

混同しがちですが、基礎の種類(べた・布・逆べた)と、断熱の位置(内基礎断熱・外基礎断熱・スラブ上断熱)別の分類軸です。
同じ基礎でも、断熱材の位置によって性能や施工性が変わります。

基礎の主な種類

    • べた基礎:建物の底面全体に鉄筋コンクリートを打設し、建物を面で支える基礎です。荷重を均等に分散でき、不同沈下に強く、防湿性や気密性にも優れます。住宅の新築で最も一般的な構造です。

    • 布基礎:建物の壁や柱の下だけに連続して鉄筋コンクリートを打つ基礎です。基礎の「布(ぬの)」が地中梁のように建物を支える構造で、床下に空間が生じます。通気性が高い一方、防湿や断熱対策が重要です。

    • 逆ベタ基礎:「逆ベタ基礎」とは、べた基礎の派生で、断熱材をスラブ上(コンクリートの上・室内側)に施工する工法を指します。従来の外側断熱に対し、断熱位置を“逆”にしたためこの名がつきました。施工性が高く防蟻リスクを抑えやすい一方、スラブ上での結露や熱橋対策が重要です。

基礎 × 断熱方式の組み合わせ一覧

「基礎の種類」と「断熱の位置」は独立した考え方ですが、実際の現場ではこの2つを組み合わせて設計されます。
下表では、代表的な組み合わせごとの実際の採用例・特徴・注意点をまとめました。

組み合わせ 実際の採用例 特徴・ポイント
べた基礎 × 外基礎断熱 ◎ 寒冷地(北海道・東北・長野北部など)で主流 断熱ラインを外皮で連続させやすく、熱橋が少ない。
床下まで室内扱いにでき、全館空調や床下エアコンと相性が良い。
外部露出部は防蟻・紫外線・機械的保護仕上げが必須
べた基礎 × 内基礎断熱
(=逆ベタ基礎)
◎ 全国的に増加中(特に温暖地・中間地) 外装仕上げが不要で施工性が高く、コストを抑えやすい。
断熱材が外気に触れないため、防蟻リスクが低い。
ただし熱橋・夏型結露への対策が必要(冷房期は特に注意)。
布基礎 × 外基礎断熱 × 現実的でない(施工・防蟻の両面で不適) 通気構造が前提のため、外側を断熱すると湿気滞留・蟻害のリスクが高い
外装仕上げも複雑でコスト・施工性ともに悪く、実務的にはほぼ採用されない。
布基礎 × 内基礎断熱 △ 一部の改修・リフォームで採用 床下空間が広く、既存住宅の断熱改修として有効。
「防湿コンクリート+内断熱」や「防湿+吹込み断熱」などハイブリッド型が現実的。
ただし気密・換気・防湿設計が不十分だとカビ・結露リスクあり。
逆べた基礎 × 内基礎断熱(標準構成) ◎ 温暖地・全館空調住宅などで採用 コンクリートスラブの上に断熱材を敷き、その上に床構造を組むタイプ。
名前の通り、「べた基礎」の断熱位置を逆転させたような構造です。
熱容量の大きいコンクリートを室内側に取り込むため、室温が安定しやすい一方、スラブ下に湿気がこもりやすく、防湿計画が重要です。
設計・施工の難易度がやや高く、高性能住宅で採用されるケースが多いです。
逆べた基礎 × 外基礎断熱 × 理論上可能だが非現実的 「逆ベタ」は本来“内断熱”を指すため、外断熱と併用するケースは稀。
二重断熱のような構成になるが、コスト・施工メリットが少なく実用性に乏しい

断熱の位置による主な種類

  • 外基礎断熱:基礎の外側に断熱材を連続させる。
    熱橋が少なく温度ムラを抑えやすいが、外部露出ゆえの防蟻・保護仕上げが必須。
  • 内基礎断熱(=逆べたの位置づけとして使われることが多い):基礎の内側に断熱材を施工。
    外装側の保護仕上げが不要で施工しやすいが、立ち上がりや貫通部の熱橋に注意。
  • スラブ上断熱:コンクリートスラブの上(室内側)に断熱材を敷く。
    コンクリートの蓄熱性を活かし室温が安定しやすい反面、防湿層の確実な連続性が求められる。

床断熱と基礎断熱の違い(クイック比較)

比較項目 床断熱 基礎断熱
断熱ライン 床で区切る(床下は外気) 基礎で区切る(床下は室内扱い)
冬の体感 床表面温度が下がりやすい 足元が冷えにくい
湿気・結露 比較的コントロールしやすい 防湿・換気・除湿の計画が必須
シロアリ対策 相対的に容易 外断熱では特に防蟻・保護仕上げが必須
全館空調との相性 標準的 良好(床下まで温度ムラを抑えやすい)
よくある疑問:「基礎断熱なのに寒い」
断熱材の厚みだけでなく、気密・換気・防湿・熱橋処理・貫通部の納まりなど、家全体のバランスが体感を左右します。
基礎の種類と断熱位置の選択は、その前提条件に過ぎません。

基礎断熱で使う断熱材の種類・厚み・選び方

基礎断熱は地面に近く、湿気・荷重・害虫の影響を受けやすい部位です。したがって、吸水しにくく耐圧性があり、長期にわたって性能を維持できる断熱材を選ぶことが前提になります。

主な断熱材の種類と特徴

断熱材の種類 特徴 基礎断熱での用途
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
(例:スタイロフォーム、ミラフォーム等)
吸水しにくく耐圧性に優れる。
施工性とコストのバランスが良い。
立ち上がり断熱、スラブ下断熱の定番材料。
押出発砲ポリスチレン工業会
硬質ウレタンフォーム
(ボード/吹付)
高断熱(λ≒0.024–0.028W/mK)。
吹付は複雑形状にも密着しやすい。
立ち上がり内側、配管周りの補強断熱など。
日本ウレタン工業会
フェノールフォーム 非常に低い熱伝導率で薄くても高性能。
吸水に弱いため屋内側での使用に向く。
内基礎断熱(立ち上がり内側)で採用例あり。
フェノールフォーム協会
材料選定の前提:基礎近傍は湿潤環境になりやすいため、耐水性・防蟻性の確認を。XPSは3種b等の高等級品、ウレタンは防蟻仕様の採用が一般的です。

断熱材の厚み(目安)

厚みは地域の寒冷度・目標等級・材料性能で決まります。以下は一般的な目安です。

地域区分 代表的材料 厚みの目安
寒冷地(北海道・東北・長野など) XPS 3種b/高性能硬質ウレタン 75〜100mm 前後
中間地〜温暖地(関東・東海・九州など) XPS 2種b/一般硬質ウレタン 50〜65mm 前後

※ 等級6–7(HEAT20 G2–G3相当)を狙う場合は100mm以上2層貼りも。厚みだけでなく、立ち上がり・スラブ端部・貫通部の連続性が体感を左右します。

選び方のチェックリスト

  • 耐水性:吸水率が低いか。土間や基礎近傍でも性能を保てるか。
  • 防蟻性:薬剤処理または物理バリア等の対策が可能か。
  • 耐圧・施工性:押えコンクリートや仕上げと干渉せず、現場で再現性高く施工できるか。
  • 断熱性能:λ値と厚みのバランス。目標等級に必要な熱抵抗を満たすか。
  • ディテール対応:立ち上がり・スラブ端部・配管貫通などで断熱ラインを切らさない納まりが取れるか。
  • コスト:材料費だけでなく、防蟻・保護仕上げ・手間まで含めた総コストで判断する。
「基礎断熱なのに寒い」の多くは、厚み不足だけが原因ではありません。
気密・防湿・換気計画・熱橋処理のいずれかが弱いと体感が悪化します。材料選定と同時に、納まりと施工品質を最優先に。

基礎断熱のメリット

基礎断熱は、住宅の外皮(そとかわ)を切れ目なく包み込むように設計されるため、「足元が冷えにくい」「室温が安定する」など、快適性の面で多くの利点があります。
近年では建築環境工学の専門家や高性能住宅の設計者の間でも、「全館空調・床下エアコンとの相性の良さ」「熱橋(ヒートブリッジ)の少なさ」が評価されており、寒冷地を中心に採用が増えています。

1. 足元から冷えにくい

基礎断熱の最大の特徴は、床下の空間も“室内の一部”として断熱・気密化する点にあります。これにより、外気の冷え込みが直接床下に伝わらず、床下温度が外気に左右されないため、床表面温度を15〜18℃程度に安定させやすいというデータもあります(※日本建築学会「住宅の温熱環境性能評価」より)。
特に寒冷地では、床断熱の家と比べて足元の体感温度差が2〜3℃程度小さいといわれ、冷え性の改善やヒートショック予防にも効果的です。

2. 温度ムラの少ない住環境

基礎断熱は床下も含めて一体的に空気を循環させる設計ができるため、1階と2階の温度差を小さく保ちやすいという特徴があります。
全館空調や床下エアコンを採用した場合、暖気や冷気が床下を経由して家全体に均一に伝わり、リビング・廊下・洗面脱衣室の温度差も少なくなります。
このため、冬でも家のどこにいても寒さを感じにくい、夏でも冷房効率が高いなど、快適性と省エネ性の両立が可能です。

また、建築研究機関の実測データによると、床下の温度変化が緩やかになることで、暖房停止後も室温の低下が1〜2時間遅くなる傾向が報告されています。これはコンクリートの蓄熱効果を活かせる基礎断熱ならではのメリットです。

3. 気密・断熱ラインが連続しやすい

基礎断熱では、床と壁・天井の断熱ラインを「基礎の立ち上がり」でつなぐ構造になるため、施工品質を安定させやすく外皮の連続性(シームレス性)が高くなる点も大きな利点です。
気密ラインが単純化されることで、気密漏れ(隙間C値)のバラつきが少ない施工が再現しやすく、結果として冷暖房エネルギーのロスも抑えられます。
高気密高断熱住宅を多数手がける設計士の間では、「基礎断熱は外皮計算上の熱橋を減らしやすく、Q値・UA値の安定性が高い」と評価されています。

4. 床下を「使える空間」として活かせる

基礎断熱で床下温度と湿度が安定すると、単なる“構造の隙間”ではなく、設備・収納・点検のための実用空間として活用しやすくなります。
たとえば、給排水管や空調ダクトを断熱層の内側に配置できるため、凍結リスクの低減メンテナンス性の向上にもつながります。
また、一定の気密性を保った床下空間は、湿気やカビのリスクを抑えながら季節を問わず安定した環境を維持できるため、住宅全体の耐久性向上にも寄与します。

このように、基礎断熱は単に「寒さ対策」のためだけでなく、快適性・省エネ性・耐久性を同時に高めるための工法です。
ただし、これらのメリットを最大限に発揮するためには、防湿・防蟻・換気計画の設計と施工精度が不可欠です。


基礎断熱のデメリット・注意点

基礎断熱は、快適で温度ムラの少ない住環境をつくる優れた工法ですが、設計や施工の精度を欠くとトラブルにつながるリスクもあります。
特に、床下を外気から切り離すことで、湿気・シロアリ・夏型結露・点検性といった課題が顕在化しやすくなります。
これらは「欠点」というより、正しい理解と対策が必要な注意点です。

1. 湿気リスク|閉じた床下は「カビの温床」にもなり得る

基礎断熱は床下を室内扱いにするため、外気と遮断されます。その分、床下の湿気が逃げにくい構造になります。
地盤からの水蒸気、生活内部からの湿気、コンクリート自体の水分などが滞留すると、カビ・腐朽・断熱材性能の低下を引き起こすおそれがあります。

特に防湿シートや防湿コンクリートの施工が不十分な場合、床下の相対湿度が80%以上に達するケースも報告されています(※国立研究開発法人 建築研究所による実測調査)。
湿気がこもることで木材の含水率が上がり、構造材の寿命を縮める原因にもなります。

ひと言ポイント:「基礎断熱では、床下換気よりも“湿気の持ち込みを防ぐ設計”が肝心です。地盤の防湿とコンクリート打設後の乾燥管理を怠ると、後から除湿機で解決できるレベルではありません。」

2. シロアリ対策が必須|暖かい床下は“理想の環境”

床下が常に15〜20℃前後の暖かい環境に保たれる基礎断熱住宅では、シロアリの活動期間が長くなる傾向があります。
特に外断熱(基礎の外側に断熱材を貼る工法)の場合、断熱材とコンクリートの間が暗く湿った空間となり、シロアリの侵入経路になるリスクがあります。

そのため、防蟻処理を含む多層的対策が欠かせません。
– 断熱材自体に防蟻成分(ホウ酸塩・薬剤)を含ませる。
– 物理的バリア(防蟻シート・金属メッシュ)を配管貫通部に施工する。
– 床下点検を定期的に実施し、侵入サイン(蟻道・食痕)を早期発見する。
こうした対策を組み合わせることで、長期的な安心が確保されます。

ひと言ポイント:「温暖地で外断熱を採用する場合、防蟻仕様のXPS(3種b)の選定と、基礎外周部の保護モルタル仕上げは必須です。これを怠ると、断熱材の裏でシロアリが活動しても外から見えません。」

3. 夏型結露|冷房期に“逆転現象”が起こることも

冬場だけでなく、意外と見落とされがちなのが夏の結露リスクです。
外気温が高く湿度が高い状態で、冷房により床下が冷えると、外壁や基礎立ち上がり内部で“逆転結露(夏型結露)”が発生します。
この結露水が木部や断熱材を濡らし、カビ・腐朽の原因になることがあります。

対策としては、除湿計画と気密・断熱バランスの最適化が重要です。
・床下を含めた全館空調で温湿度を一定に保つ。
・室内外の温度差を急激にしない。
・立ち上がり部やスラブ端部に断熱欠損をつくらない。
特に近年の高気密住宅では、“換気不足による湿気滞留”も結露の原因になるため、計画換気のバランスを設計段階で検証することが求められます。

4. 点検・メンテナンス性|性能を保つ「アクセス設計」が重要

基礎断熱は床下を閉じた空間にするため、施工後の点検や補修がしにくいという課題もあります。
給排水や空調ダクトが断熱層の内側にあるため、施工精度と将来のアクセス性を両立させる設計が必要です。

たとえば、床下点検口や人通口を適切な位置に設けること、配管経路を明確化すること、換気経路の確認を行うことなどが重要です。
「高性能住宅=メンテナンスフリー」ではなく、「点検しやすい高性能住宅」であることが理想です。

ひと言ポイント:「床下は“閉じるほど良い”ではありません。維持管理まで含めた設計が、結果的に住宅の寿命を延ばします。」

デメリットは“設計と施工で防げるリスク”

基礎断熱のデメリットは、どれも「構造上の弱点」ではなく「設計・施工上の配慮不足」によって生じるものです。
つまり、正しい知識と適切なディテール設計を行えば、ほとんどのリスクは防ぐことができます。
特に寒冷地では、防蟻仕様断熱材・防湿処理・計画換気を一体で考えることが、長期に安心できる基礎断熱のポイントです。


基礎断熱でシロアリ被害が発生したら? 基礎タイプ別の原因と対処法

基礎断熱は快適な室内環境を実現できる反面、床下が温かく湿度も一定に保たれるため、シロアリが侵入しやすい環境になりがちです。
防蟻処理や気密対策を行っていても、施工の隙間や劣化によって被害が発生することがあります。
ここでは、基礎のタイプ別に見た「被害の起きやすいポイント」と「発生時の現実的な対処法」を解説します。

1. べた基礎でのシロアリ被害と対処法

べた基礎は床下全体をコンクリートで覆う構造のため、地中からの侵入リスクは比較的低いとされています。
しかし、次のような経路から被害が発生することがあります。

  • 基礎立ち上がりの内側に施工した断熱材の裏側を通って侵入
  • 配管貫通部の気密・防蟻処理が不十分
  • 外基礎断熱の場合、外装材の隙間から外側断熱材へ到達

被害が発見された場合は、まず専門業者による床下点検を実施し、蟻道(シロアリの通り道)の位置を特定します。
被害部位が限定的な場合は、部分的な薬剤注入や断熱材の交換で対応可能です。
断熱材が広範囲に侵食されている場合は、断熱材の撤去+再防蟻処理+断熱再施工を行い、再発防止のために気密シールや物理バリアを追加します。

2. 布基礎(ぬの基礎)でのシロアリ被害と対処法

布基礎は立ち上がりの下が地面に直接接する部分が多く、床下に湿気がこもりやすいため、シロアリ被害が起きやすい構造です。
通気口や換気経路が断熱によって塞がれているケースでは、湿度が上昇しやすく、被害が拡大しやすい傾向にあります。

  • まず防湿・換気の見直しが第一歩。床下の防湿シート施工や機械換気の導入で再発を防ぎます。
  • 蟻害が確認された断熱材は必ず撤去し、基礎内側にホウ酸系防蟻処理を施します。
  • 必要に応じて、布基礎の一部をべた基礎化(防湿コンクリート化)する改修も検討可能です。

シロアリ被害の再発を防ぐには、床下環境の温湿度管理と、定期的な点検が欠かせません。
年に1回程度の点検と、換気設備の動作確認をルーチン化することで、被害の早期発見につながります。

3. 逆べた基礎(内基礎断熱)でのシロアリ被害と対処法

逆べた基礎(=内基礎断熱)は、基礎立ち上がりの内側に断熱材を設ける構造のため、断熱材が隠蔽部に配置され、被害の発見が遅れやすいという特徴があります。
シロアリはコンクリートの微細な隙間や貫通スリーブを伝って侵入し、断熱材の内部で活動することがあります。

  • 被害発見時は内装側(床下または壁内)からの調査が必要。
  • 被害範囲が限定的なら、断熱材の一部除去+ホウ酸処理+気密再施工で対応。
  • 広範囲の場合は、内基礎断熱を一度撤去し、外基礎断熱またはスラブ上断熱への切替えを検討。

再発防止のポイントは、断熱材の下地と貫通部を確実に気密・防蟻処理すること
施工後も床下カメラや点検口を用いて、半年〜1年ごとの点検を推奨します。

重要:シロアリ被害が発生した場合、断熱材をそのまま残して薬剤を注入するだけでは不十分です。
被害の原因(侵入経路・湿気・換気不良)を特定し、再発防止策まで一体で行うことが重要です。
また、防蟻薬剤の効果は永続しないため、5〜10年ごとの再処理を目安にしましょう。

シロアリ被害は、断熱性能だけでなく、構造耐久性や室内環境の健全性にも直結する問題です。
定期的な点検・防蟻メンテナンス・湿度管理を行うことで、基礎断熱住宅でも長く安心して暮らすことができます。


基礎断熱が向いている家・向かない家

基礎断熱は、すべての住宅に万能な工法というわけではありません。
建物の立地環境・構造・暮らし方によって、適性が大きく変わります。
ここでは、これまでの実績や専門家の見解をもとに、「基礎断熱が向いているケース」と、注意すべき「向かない可能性があるケース」を整理しました。
ご自宅の条件に照らし合わせて、採用判断の参考にしてみてください。

✔ 向いているケース

  • 寒冷地で冬期の足元冷えを強く改善したい
  • 全館空調・床下エアコンを採用する計画
  • 高気密高断熱の設計で断熱ラインを連続させたい
  • 床下を配管・収納等で積極活用したい

✖ 注意・向かない可能性があるケース

  • 地盤が湿潤・高湿地域で防湿・換気計画が難しい
  • シロアリ被害が多発する温暖地・沿岸部
  • 複雑な基礎形状で防蟻・防湿・気密の施工難度が高い
  • 点検口の確保や将来の維持管理が想定しづらい設計

基礎断熱は、「環境・設計・施工精度」の3要素がそろって初めて効果を発揮します。
寒冷地や高気密住宅との相性は非常に良い一方で、湿気・シロアリリスクが高い地域では慎重な検討が必要です。
どちらの工法を選ぶにしても、最も大切なのは「家全体の熱と湿気の流れを理解したうえで、トータルバランスを取ること」です。


基礎断熱 vs 床断熱:比較表

比較項目 基礎断熱 床断熱
断熱位置 基礎コンクリートの外側/内側 床下の構造材下部
冬の快適性 足元が冷えにくく温度ムラが少ない 床下が冷えやすい
湿気リスク 高い(要:防湿・換気計画) 比較的低い
シロアリリスク 高い(要:物理+化学的防蟻)注意 相対的に低い
メンテナンス性 点検口や人通口の確保が前提 比較的容易
コスト感 やや高めになりやすい 標準的
地域適性 寒冷地と相性が良い 温暖地で扱いやすい

リフォームで基礎断熱は可能?現実的な選択肢

「今の家を基礎断熱にしたい」という相談は少なくありません。
しかし、既存住宅を新築同様に完全な基礎断熱構造へ改修するのは、構造的・工期的・コスト的なハードルが非常に高いのが現実です。
基礎の形状や床下高さ、配管ルート、既存の防湿施工などの制約があり、単純な断熱材の追加だけでは性能を十分に発揮できない場合もあります。
そのため、専門家の間では「部分的な改善や組み合わせで、基礎断熱に近い効果を得る」という現実的なアプローチが推奨されています。

主なリフォームの選択肢

    • 床下断熱リフォーム:
      床下側から既存の床組の下に断熱材を追加・補強する方法です。
      床を壊さずに施工できるため工期が短く、コストも比較的抑えやすいのが特徴。
      断熱材にはグラスウールや吹込み式のセルロースファイバーなどが使用され、床表面温度の上昇によって「底冷え感」を大きく改善できます。
      防湿シートの施工や配管の隙間処理を同時に行うことで、断熱性能の持続性が高まります。

床下でセルロースファイバー断熱材を施工する作業員
床下から断熱改修のイメージ

    • 防湿+断熱のハイブリッド改修:
      床下の地面に防湿シート+防湿コンクリートを施工し、湿気の上昇を抑えた上で、断熱材を吹き込む方法です。
      吹込み断熱材としては、自然素材のセルロースファイバーが代表的で、断熱+調湿効果の両立が可能です。
      床下を密閉せずに施工できるため、結露リスクを抑えながら快適性を高めることができ、築年数の経過した住宅でも採用しやすい方法です。


防湿シート敷きのイメージ

ひと言ポイント:「基礎断熱リフォーム」という言葉にとらわれず、“床下の温熱・湿気環境を整える”という目的で設計することが重要です。
既存住宅では、基礎断熱そのものよりも、防湿・気密・防蟻のバランスを最適化した改修の方が、結果的に耐久性・快適性を高めるケースが多く見られます。

床下の防湿・防蟻・気密という三要素をしっかり押さえれば、リフォームでも快適性と耐久性を両立できます。
「基礎断熱にできないから諦める」ではなく、今の家の構造と環境に合った最適な断熱改修を選ぶことが、結果として長く快適に暮らす近道です。


検討時に知っておきたい3つの視点

基礎断熱を検討する際に見落とされがちなのが、「断熱だけを単独で考えてしまう」ことです。
住宅の温熱環境は、断熱・気密・防湿・防蟻・換気・点検性といった複数の要素が密接に関係しています。
このバランスを理解して計画することで、初めて長く快適に住める家になります。
以下の3つの視点は、専門家も共通して重視する“住宅性能を左右する基本原則”です。

1. 断熱は「家全体」で考える

断熱性能は、基礎だけを強化しても十分な効果が得られません。
天井・壁・窓といった外皮(建物を包むすべての面)の性能をバランスよく高めることが重要です。
たとえば、床下だけを断熱しても、窓の性能が低ければ熱はそこから逃げてしまいます。
部分最適ではなく、家全体の熱の流れ(熱損失経路)を俯瞰して設計することが、結果的に最も効率的です。
また、断熱材の性能値(熱伝導率 λ)や厚みだけでなく、施工精度と気密性能(C値)も快適性を左右します。
「断熱=材料選び」ではなく、「断熱=設計+施工+気密の一体管理」という視点が大切です。

2. 「気密・防湿・防蟻」はセット

高断熱住宅の性能を支えているのは、見えない部分の丁寧な処理です。
特に気密・防湿・防蟻の3要素は、いずれか一つが欠けると性能劣化やトラブルの原因になります。
例えば、防湿層の継ぎ目処理が甘ければ、床下に湿気が滞留しカビや腐朽のリスクが高まります。
また、防蟻処理が不十分だと、シロアリが断熱材の中を通って基礎や構造材に侵入する恐れもあります。
設計段階から「どの材料をどこまで施工するか」「どのように連続させるか」を明確にし、現場で再現できる図面・仕様書を整えることが不可欠です。
これは、国交省の「住宅性能表示制度」や「長期優良住宅」の基準でも一貫して重視されている考え方です。

3. 点検性と維持管理まで設計する

性能を長く維持するためには、「点検のしやすさ」も性能の一部と考えるべきです。
床下を完全に密閉してしまうと、施工直後は良好でも、将来的な配管交換や漏水確認が困難になります。
そこで、点検口・人通口・換気経路を確保し、万が一の不具合にも対応できる設計が望まれます。
特に基礎断熱では、床下が“居室に近い環境”になるため、定期的な換気・除湿が重要です。
これを怠ると、内部結露やカビの発生に気づかず、性能低下や健康被害につながることもあります。
「完成時の性能」よりも「10年後も維持できる設計思想」を持つことが、長寿命住宅の鍵です。

基礎を断熱するより、「家をまるごと断熱で守る」という考え方を

基礎断熱は、冬の足元の冷え改善や温度ムラ低減に有効な一方、湿気・シロアリ・夏型結露・点検性などの課題に対する周到な計画と施工品質が求められる工法です。
地域・構造・暮らし方により適性が変わるため、家全体の熱の流れを踏まえた最適解を選びましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. 寒冷地では基礎断熱がベストですか?

寒冷地では、基礎断熱は確かに有効な選択肢のひとつです。
床下まで暖めることで凍結防止や底冷えの軽減に効果がありますが、「ベスト」とは限りません。
地盤の湿潤度や周辺環境(地下水位・積雪量など)、シロアリの分布、建物形状によっては、床断熱+防湿施工の方が合理的なケースもあります。
また、寒冷地でも沿岸部などは湿度が高く、防蟻・防湿計画を十分に取らなければ結露や蟻害のリスクが増します。
地域の気候特性と施工者の経験値をもとに、家全体の断熱計画とセットで判断するのが理想です。

Q. リフォームで基礎断熱にできますか?

原則として、既存住宅を新築同様の基礎断熱構造へ全面改修するのは、構造・コスト・工期の観点からハードルが高くなります。
そのため、実務上は次のような現実的な代替策が採られることが多いです。

  • 床下断熱の強化:既存の断熱材を補修・追加して足元の温度を改善。
  • 防湿+断熱のハイブリッド施工:床下の湿気対策を行いながら、吹込み断熱材(例:セルロースファイバー)で保温性を高める。

これらの方法でも、防湿・防蟻・気密の3点を確実に押さえることで、体感温度の改善と耐久性向上が十分に期待できます。
目的は「基礎断熱そのもの」ではなく、床下環境を健全に整えることにあります。

Q. シロアリが心配です。どう対策しますか?

基礎断熱では床下が暖かく湿度も一定に保たれやすいため、シロアリにとって好環境になりやすい点は否定できません。
そのため、防蟻対策は“必須項目”として考える必要があります。
代表的な対策は以下の通りです。

  • 基礎貫通部・断熱材取り合い部に物理バリア(防蟻シート・メッシュ)を設ける
  • 断熱材表面に防蟻薬剤(ホウ酸処理など)を塗布または含浸させる
  • 床下に点検通路と換気経路を確保し、定期点検を容易にする

特に温暖地や沿岸部では、シロアリの活動時期が長く、被害リスクが高い傾向があります。
一方で、寒冷地では活動期間が短いため、防湿・換気・断熱のバランスを優先するケースもあります。
建築地の気候条件に応じた防蟻計画を立てることが、長期耐久性の鍵です。

Q. 全館空調と基礎断熱は相性が良いですか?

相性は非常に良いとされています。
基礎断熱では床下も室内空間として温度制御できるため、空気の流れを均一に保ちやすく、上下階の温度ムラを抑制できます。
特に床下エアコンや全館空調システムを併用すると、家全体を低温差でコントロールでき、ヒートショック防止にも効果的です。
ただし、湿気や夏型結露を防ぐために、適切な換気計画・除湿機能・気密施工が前提となります。
全館空調を採用する場合は、施工者と連携して基礎断熱ライン・ダクト経路・換気バランスを一体的に設計することが重要です。

Q. 基礎断熱と床暖房を併用できますか?

可能ですが、設計上の注意点があります。
基礎断熱を採用した住宅では、床下空間も室内温度に近いため、床暖房を強く稼働させるとオーバーヒートしやすくなります。
そのため、低温水式の床暖房や、床下空間を暖める間接暖房方式が推奨されます。
また、床暖房パネルや断熱層の位置によっては、熱橋や結露のリスクが高まるため、詳細設計時に熱流解析や温度シミュレーションを行うことが望ましいです。

Q. 基礎断熱の耐久年数はどのくらいですか?

使用する断熱材の種類・施工精度・防湿環境によって異なりますが、適切に施工・維持管理された場合でおおむね30〜50年が目安とされています。
ただし、断熱材が湿気を吸って性能が低下したり、シロアリ被害を受けた場合は、局所的な補修が必要になることもあります。
定期的な点検と、床下の湿度管理(除湿機や換気ファンの設置)を行うことで、断熱性能の長期維持が可能です。

Q. 気密を取りたい場合、基礎断熱と床断熱はどちらがおすすめ?

気密を確実に取りたいなら、基礎断熱のほうが有利です。基礎と壁の取り合いがシンプルで、断熱・気密ラインを連続させやすく、隙間の発生を抑えられます。床断熱でも丁寧な気密処理を行えば高い性能は得られますが、構造材や配管まわりなど施工箇所が多く、職人の技量や管理精度に左右されやすい点が特徴です。


私たちは基礎断熱そのものの施工は行っていませんが、天井・壁・床などの断熱改修や、床下の防湿・気密改善など、住まいの性能を高めるご相談を承っています。
住まいの断熱を見直したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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