【Q&A】プロから一般ユーザーまで必読! 気密測定51の疑問を一挙解説 公開日:2025年4月18日/更新日:2025年4月18日 執筆者 Yanagisawa Naoki 気密測定技能者・しろあり防除士・WEB解析士 2007年に日本でセルロースファイバー断熱工事のパイオニアであった、有限会社信濃ビケン(長野市)に入社。セルロースファイバーの施工職人として従事。2012年に株式会社テオリアランバーテックに統合され、入社から10年以上で約2000棟以上のセルロースファイバー断熱工事や気密測定技能者の経験を経て、現在は断熱・気密に関する正しい情報を発信するため活動している。 完成後に見えなくなる構造部分の精度を、客観的にチェックできる数少ない方法が気密測定です。 家全体の隙間を測定し数値化することで、施工品質を証明できるだけでなく、将来の結露や構造劣化のリスクも未然に把握できます。これは長期にわたる資産価値と快適性を守るための重要なデータとなります。 「測定って何をするの? コストは? 本当に効果があるの?」プロも施主も抱く疑問をまとめて解消できるよう、工務店・ハウスメーカー・建築士・施主の視点で51 の Q&Aを用意しました。 読み終える頃には、「気密=難しい技術用語」から「家づくりに欠かせない判断基準」へとイメージがガラリと変わるはずです。 目次 Toggle これを知りたい!気密測定Q&A51問Q1. 気密測定とは何ですか?Q2. なぜ気密測定が必要なの?Q3. 新築の場合、測定のベストタイミングは?Q4. リフォーム物件でも測定できますか?Q5. 測定にかかる時間は?Q6. DIY で測定できますか?Q7. 測定費用の相場は?Q8. どんな機械を使う?Q9. C 値とは?Q10. 目標 C 値はどのくらい?Q11. n 値って何?Q12. C 値が悪かった主な原因は?Q13. 悪い結果が出たらどう直す?Q14. 測定前に施主が準備することは?Q15. 建築途中で何回測定すればいい?Q16. 大工や現場監督の立ち会いは必須?Q17. 測定で建物が壊れる心配は?Q18. 冬と夏、どちらで測定すべき?Q19. 測定報告書には何が書かれている?Q20. C 値と UA 値の関係は?Q21. 高気密住宅は第一種換気が必須?Q22. 第三種換気でも高気密にできますか?Q23. 気密テープと気密シートの違いは?Q24. 樹脂窓とアルミ窓で C 値は変わる?Q25. 土台と基礎の取り合いで注意点は?Q26. 配管貫通部のベストな処理は?Q27. 気密と防水は同じ?Q28. 木造と鉄骨造、どちらが気密を取りやすい?Q29. 高気密施工はコストがどのくらい増える?Q30. 施主が工務店を選ぶときのポイントは?Q31. 測定データに保証は付く?Q32. 経年で C 値は悪化しますか?Q33. 既存住宅リフォームの目標 C 値は?Q34. 吹き抜けがあると C 値は不利?Q35. 断熱材の種類で気密性は変わる?Q36. 吹付ウレタンだけで気密は取れる?Q37. 測定時、24 時間換気は止めるの?Q38. 強風の日は測定できる?Q39. 試験中にエアコンはどうする?Q40. 気密が高いと防音性能は上がる?Q41. 高気密住宅は火災時に煙が充満しやすい?Q42. ZEH や太陽光と関係は?Q43. 補助金や税制優遇に C 値は関係ある?Q44. 漏気箇所を探す道具は?Q45. パッシブハウスでも測定はできますか?Q46. 測定値の改ざん防止は?Q47. 気密測定に関する公的規格は?Q48. 海外との比較は?Q49. 今後 C 値が法制化される可能性は?Q50. 施主への説明で重要なポイントは?Q51.気密測定に向いていない(高気密を狙っていない)建物の構造や種類はありますか?タイプ別の活用方法 これを知りたい!気密測定Q&A51問 Q1. 気密測定とは何ですか? 送風機で室内を減圧(または加圧)し、圧力差によりどれだけ空気が漏れるかを測る試験です。測定点毎に 10・20・30・40・50 Pa など複数の差圧を取り、相当隙間面積(C 値)と漏気抵抗(n 値)を算出。測定器は 0.1 Pa 単位の精度が求められ、結果はログデータで保存されます。 Q2. なぜ気密測定が必要なの? 断熱だけ良くても隙間が多いと熱が逃げ、省エネ住宅の性能が設計値より 20〜40 % 落ちる例があります。実測することで施工のばらつきを可視化し、完成後の光熱費・結露・騒音トラブルを防止できます。さらに補助金(長期優良・ZEH 等)で報告書提出を求める自治体が増加中です。 Q3. 新築の場合、測定のベストタイミングは? 暖房配管・電気配線の貫通や窓の取付が終わり、石膏ボードを張る前(中間測定)が最善です。この段階なら壁内の漏気を簡単に補修でき、完成測定で高い数値を狙えます。中間+完成の 2 回測定で平均 C 値が 30 % 改善した統計もあります。 Q4. リフォーム物件でも測定できますか? 可能です。既存住宅の平均 C 値は 5.0 前後(昭和 50 年代)ですが、気流止めと窓改修で 1.5〜2.0 へ改善した事例が多数報告されています。測定結果は補助金(子育てグリーン住宅等)のエビデンスにも活用できます。 Q5. 測定にかかる時間は? 一般的な戸建て住宅(延床面積約120㎡)の場合、気密測定にかかる時間は、準備から測定、結果の説明まで含めて約1.5〜2時間が目安です。ただし、漏気箇所の特定や補修作業を含む場合は、さらに時間を要することがあります。 Q6. DIY で測定できますか? 市販の気密測定機材は本体価格が100万円を超え、年1回の校正も必要です。さらに送風機の能力や気象条件によっては、測定誤差が±30%以上出ることもあり、精密な測定には専門的な知識と経験が欠かせません。そのため、一般的には専門業者に委託するのが安心で確実です。 なお、ヤマイチが開発した最新の気密測定器『ドルフィン2』は、一般の方でもレンタルが可能です(※2022年4月1日休止中)。ただし、正確な測定には気圧差の調整や機器の設定、測定環境の理解が必要であり、経験がない方には正しい測定とC値の算出は難しいのが実情です。 「試してみたい」「気になる部分だけチェックしたい」という場合は、簡易的なリークチェッカーで風の流れを確認することはできますが、正式な性能評価としてのC値取得には、やはりプロのサポートが推奨されます。 Q7. 測定費用の相場は? 気密測定の費用は、建物の規模や測定回数、地域によって異なりますが、一般的な戸建て住宅(80〜150㎡)で1回あたり5〜10万円が目安です。中間測定と完成測定の2回セットで依頼する場合、10〜15万円程度となることが多いです。 Q8. どんな機械を使う? 気密測定では、専用の『ブロアドアユニット』と呼ばれる機器を使用します。日本製の代表的な気密測定器には、コーナー札幌の『KNS-5000C』とヤマイチの最新機種『ドルフィン2』があります。 特に最新モデル『ドルフィン2』は、Bluetooth接続で測定データをスマートフォンにリアルタイムで転送できるため、作業効率やデータ管理の精度が向上しています。また、JIS A 2201(建築物の気密性能測定方法)に則った測定にも対応しているため、精度や信頼性を重視した公的な測定・報告が可能です。 Q9. C 値とは? 相当隙間面積=総隙間面積(cm²)÷延床面積(㎡)。C=1.0 は 10 m×10 m の家(100 ㎡)に名刺 1 枚弱の穴が空いている計算です。小さな数値ほど風の出入りを抑えられ、UA 値が同じでも暖房負荷が最大 40 % 差が出た測定例があります。 ① 延べ床面積:100㎡(総隙間面積:50cm²) 「名刺ちょうど1枚分の穴」が空いている。 ② 延べ床面積:120㎡(総隙間面積:60cm²) 「名刺約1.2枚分」または「ハガキ約40%(4割程度)の面積」に相当。 ③ 延べ床面積:140㎡(総隙間面積:70cm²) 「名刺約1.4枚分」または「ハガキの約半分弱(約47%)」の穴が家全体に空いている。 <参考> 名刺の面積:約50.05 cm² ハガキの面積:148.0 cm² Q10. 目標 C 値はどのくらい? 北海道や寒冷地の高性能住宅では0.3以下が推奨され、0.5以下でも良好です。本州の次世代省エネ基準(HEAT20 G2)で0.5〜1.0、HEAT20 G3では0.3〜0.5以下が望ましい目安です。特に0.5以下に抑えると、暖房エネルギー削減効果が計算上15〜20%程度向上します。 Q11. n 値って何? 漏気量と差圧の相関を示す指数。1.0~2.0の間で推移し、1.0 に近いほど隙間が均一で、2.5 を超えると大きな開口が点在する状態。住宅金融支援機構のデータでは n 値 1.5 未満の家は暖房機の消費電力量が平均 12 % 減っています。 Q12. C 値が悪かった主な原因は? 住宅の気密性能が悪化する主な原因としては、「配管貫通部の処理不足」「窓まわりのシーリングの甘さ」「天井点検口の隙間」などが挙げられます。これらは施工時に見落とされやすく、特に配管貫通部や窓の隙間から漏気するケースが非常に多く見られます。施工品質を向上させるためには、これらのポイントを重点的にチェックし、丁寧な気密処理を行うことが大切です。 Q13. 悪い結果が出たらどう直す? 発煙テストや赤外線サーモグラフィで漏気箇所を特定し、気密テープ・発泡ウレタン・シリコン等で補修した後、再度50Paで測定することが標準的です。 Q14. 測定前に施主が準備することは? 排水トラップに水を張り封水、換気扇・給気口を閉じる、薪ストーブ吸気ダンパーを閉鎖、室内ドアを全開にしておく等。事前にリストを配布しておくと再試験のリスクを減らせます。 Q15. 建築途中で何回測定すればいい? 新築住宅の場合、気密性能を確実に高めるために、「建築途中の中間測定」と「建物完成後の完成測定」の2回行うのが効果的です。特に中間測定では、工事中に隠れてしまう壁や天井内の漏気を早期に発見・修正できるため、完成時に理想的な気密性能(C値)を実現しやすくなります。少なくとも完成時に1回は測定を行い、建物の気密性能を確実に確認することをおすすめします。 Q16. 大工や現場監督の立ち会いは必須? 気密測定の際、大工や現場監督が立ち会いを行うことで、施工不備の早期発見と即時対応が可能となります。特に配管貫通部や窓周りの漏気箇所は現場での即時修正が効率的であり、立ち会いがない場合には後日再測定が必要となり、追加の人件費や資材費がかかる可能性があります。施工管理の効率化と品質向上を目指すなら、現場担当者の立ち会いは非常に重要です。 Q17. 測定で建物が壊れる心配は? JIS A 2201やISO9972の基準では、気密測定で使用する50Paの圧力は風速約9m/sに相当する軽微なものであり、住宅の建材や窓ガラスに損傷を与えた事例は報告されていません。 Q18. 冬と夏、どちらで測定すべき? 気温補正により季節差の影響は軽微ですが、冬季の方が外気密度が高く測定が安定し、漏気補修に使用する発泡ウレタンの硬化も早いことから、冬季の測定を推奨します。 Q19. 測定報告書には何が書かれている? C 値・n 値・漏気曲線、試験条件(温度・湿度・風速)、補正後の 50 Pa 漏気量、写真付き漏気箇所、改善提案。自治体補助や長期優良住宅申請では PDF 提出が必須になる場合が多いです。 Q20. C 値と UA 値の関係は? UA=断熱、C=気密。UA0.46・C1.5 の家より UA0.60・C0.3 の家の方が暖房負荷が低い計算結果もあり、両者をバランスさせる設計が重要です。 Q21. 高気密住宅は第一種換気が必須? 義務ではありませんが、第一種(熱交換型)を組み合わせると換気熱損失を最大 80 % 回収可能。第三種でも給気口断熱を強化すれば高気密と両立することが可能。 Q22. 第三種換気でも高気密にできますか? 可能ですが、外気給気口から冷気が直接入るため、給気口ヒーターやパッシブ給気 BOX で結露対策が必要になります。 Q23. 気密テープと気密シートの違いは? テープ=ジョイントや貫通部の線シール、シート=壁面全体を包む面シール。両方を併用することで水平・垂直方向の気流を同時に遮断できます。 Q24. 樹脂窓とアルミ窓で C 値は変わる? 樹脂窓はフレームのたわみが少なく、二重ガスケット付きの商品は C 値 0.1 相当。アルミ単板は経年で変形しやすく、パッキン硬化で漏気が増える傾向があります。 Q25. 土台と基礎の取り合いで注意点は? 基礎断熱の場合、アンカーボルト周りと基礎パッキン切れ目から漏気しやすい。止水気密両用パッキン+ウレタン充填が推奨納まりです。 Q26. 配管貫通部のベストな処理は? 気密パッキン一体型スリーブ+外部防水テープ+室内側ブチルテープの三重シール。火気配管は耐火シーラントを併用すると消防検査もクリア。 Q27. 気密と防水は同じ? 目的が異なり材料選定も別。気密材は空気漏れ 50 Pa、防水材は水圧 0.2 MPa を基準に設計されています。 Q28. 木造と鉄骨造、どちらが気密を取りやすい? 木造は構造用面材で連続シールしやすく、鉄骨は外壁パネル目地のシール幅が広いため大開口での漏気リスクが高い。実測平均は木造 0.7、鉄骨 1.2(HEAT20 調査)。 Q29. 高気密施工はコストがどのくらい増える? 気密テープ・ウレタン・専用パッキンの材料費+施工手間が坪あたり 1〜2 万円。光熱費が年間 6〜10 万円下がるケースが多く、5 年前後で回収できる計算です。 Q30. 施主が工務店を選ぶときのポイントは? 過去 3 年間の平均 C 値、測定棟数、再測定率、担当技術者の気密施工資格(BIS・気密測定技能者)保有状況を確認すると安心です。 Q31. 測定データに保証は付く? 完成保証保険に「C 値 1.0 以下達成で保険金 10 万円」などを付帯する会社が増加。契約時に特記事項で明記します。 Q32. 経年で C 値は悪化しますか? 木材収縮、機器貫通増設で 10 年後に平均 0.1〜0.2 上昇のデータがあります。ただし気密シートを外周で連続させた住宅はほとんど変化しません。 Q33. 既存住宅リフォームの目標 C 値は? C値が2.0 以下を切ると体感温度が大幅改善。窓周りと天井気流止め追加で 1.0 近くまで下がった市街地木造の実例もあります。 Q34. 吹き抜けがあると C 値は不利? 貫通部が増え難易度は上がるものの、階間気密層を石膏ボード連続張り+テープで処理すれば C 値 0.5 以下の実績多数。 Q35. 断熱材の種類で気密性は変わる? 発泡ウレタンは自己接着性で隙間を埋めやすく C 値が 20 % 改善しやすい。繊維系は気密シート必須だが施工手順を守れば同等性能が可能です。 Q36. 吹付ウレタンだけで気密は取れる? 居室間のベーパーバリアが途切れると冬季結露の恐れ。ジョイント部は気密シートとテープを併用し、防湿と気密を両立させるのが推奨です. Q37. 測定時、24 時間換気は止めるの? はい。給気グリルと排気ファンはテープで一時的に封鎖。スリーブ挿入型の防火ダンパーはシャッター位置を固定します。 Q38. 強風の日は測定できる? 外風速 5 m/s を超えると誤差が ±15 % 以上になるため延期することが望ましい。大型ブルワー追加で補正する方法もあります。 Q39. 試験中にエアコンはどうする? 送風のみ停止、暖房モードも停止が原則。暖房を事前に切り忘れると室温が 28 ℃ を超え、機器の温度補正誤差が増えます。 Q40. 気密が高いと防音性能は上がる? 隙間が 1 mm あると 30 dB の音が 6 dB 透過増加する試験結果があり、C 値 1.0→0.3 で外部騒音が体感で半減した例があります。 Q41. 高気密住宅は火災時に煙が充満しやすい? 換気停止で排煙が遅れる懸念があるため、防火戸+自動排煙窓(電動オペレーター)を設けると安全性が高まります。 Q42. ZEH や太陽光と関係は? 高気密により冷暖房負荷が減り、一次エネルギー削減率が 10〜15 % 向上。ZEH 達成に必要な太陽光容量を 0.5〜1.0 kW 減らせる試算があります。 Q43. 補助金や税制優遇に C 値は関係ある? 長期優良・性能向上計画認定では C 値提出が加点採点の自治体が 2025 年度 54 団体。2025年に国が行っている「子育てグリーン住宅事業・先進的窓リノベ2025事業」では添付不要ですが提出すると審査がスムーズです。 Q44. 漏気箇所を探す道具は? スモークペン(煙可視化)、超音波リークディテクター、IR サーモカメラ、ピトー管式風速計の 4 点セットがあれば大半の漏気は特定可能です。 Q45. パッシブハウスでも測定はできますか? もちろん可能です。むしろパッシブハウスのような高性能住宅では、気密測定は不可欠とされています。 パッシブハウスとは、冷暖房に極力頼らず、太陽光・断熱・気密・日射取得などの自然エネルギーを活かして、一年中快適に暮らせるドイツ発祥の省エネ住宅です。建築基準も非常に厳しく、特に**気密性能は「n50=0.6回/h以下」とされています。 このため、パッシブハウスの気密測定では、減圧・加圧の両方を実施し、漏気量の平均値を求めることが標準とされています(ISO 9972やJIS A 2201にも準拠)。 最新の測定機器『ドルフィン2』などを用いれば、JIS規格に対応しつつ正確な測定が可能で、パッシブハウスの性能証明にも対応できます。 Q46. 測定値の改ざん防止は? ロガー自動保存・第三者技能者立会い・クラウド提出の 3 点セットで信頼性を確保。国交省の性能向上計画認定ではログ提出が標準化されつつあります。 Q47. 気密測定に関する公的規格は? 日本は JIS A 2201:2022、国際的には ISO 9972:2015 が標準。試験差圧・温度補正・報告書様式が規定されています。 Q48. 海外との比較は? 日本の一般的な住宅の気密性能(C値)は、欧米諸国やカナダのパッシブハウスなどの高性能住宅と比較すると低い傾向にあります。特に北欧や北米の高性能住宅では、C値0.3以下など非常に厳しい基準が一般的ですが、日本ではまだまだC値1.0〜2.0程度の住宅が主流です。この気密性の差が、省エネ性能や住環境の快適性に大きな影響を与えているため、日本国内でも住宅の気密性向上が今後ますます重要になるでしょう。 Q49. 今後 C 値が法制化される可能性は? 現在の日本の省エネ基準には、C値(相当隙間面積)に関する具体的な数値基準は設けられていません。しかし国土交通省は、2025年に新築住宅の省エネ基準適合を義務化し、さらに2030年までには新築住宅においてZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を標準とする方針を示しています。このような段階的な基準の引き上げに伴い、将来的に住宅の気密性能(C値)の数値基準が再導入される可能性も議論されています。ただし、現時点で具体的な数値や導入時期が明示されているわけではなく、今後の動向に注視する必要があります。 Q50. 施主への説明で重要なポイントは? 快適性(温度ムラ減)・健康(結露カビ抑制)・光熱費(年間▲6〜10 万円)・資産価値(市場で差別化)を、実測 C 値と改善事例グラフで示すと理解が深まり、契約率が平均 15 % 上がると報告されています。 Q51.気密測定に向いていない(高気密を狙っていない)建物の構造や種類はありますか? 結論、あります。気密測定は屋内の空気を強制的に出し入れして“隙間の量”を数値化する試験のため、建物全体を「密閉できる構造」であることが前提となります。 そのため、以下のような建物は正確な測定が難しい、または測定そのものに適していないことがあります。 <測定に向いていない建物の例> ・開放的な構造の住宅 ・平屋で軒が深く、玄関まわりや軒天と屋内がつながっている場合 ・土間と屋外が連続している構造 ・集合住宅の一室のみ ・上下左右の住戸と隣接しており、単独で密閉空間が成立しないケース ・古民家・伝統工法の住宅 ・真壁づくりや土壁、格子窓など、意図的に通気性を確保している構造 ・倉庫・工場などの非住宅用途で高気密設計をしていない建物 ・排煙・排気開口が多く、そもそも気密性能を重視していないケース 上記のような建物でも、一時的に開口部を塞ぐ、区画を分けて測るなどの工夫をすることで測定可能になる場合があります。ただし、測定結果の信頼性や解釈には注意が必要です。 タイプ別の活用方法 設計者・工務店向け:#1〜#30 を重点的に確認し、社内マニュアルへ反映。 施主・一般ユーザー向け:#31〜#50 を読み、業者選定や補助金申請の質問リストとして活用。 建築士試験・BIS 講習対策:C 値/n 値計算式と JIS 手順を暗記しておくと実務で役立ちます。 すき間を数値で可視化できるのは、家づくりの一度きり。 気密測定で得たデータは、快適さ・健康・省エネ・資産価値を裏づける“住まいの健康診断書”になります。 今回の Q&A が、あなたの家づくりを「なんとなく」から「根拠のある選択」へ。 さあ、すき間ゼロの快適な暮らしへ――次はあなたの番です。