こんにちは!セルロースファイバー断熱材施工専門店のヤナギサワです。
新築やリフォームでお家をの工事をする際、「UA値(ユーエー値)」という言葉を耳にしたことはありますか?本記事では知ってて損はないUA値について詳しく解説していこうと思います。
UA値ってなに?
住宅の断熱性能を数値で表すときに使われるのが、UA値というものです。UA値とは、外皮平均熱貫流率という言葉の略で、住宅の外壁や窓などの外皮部分からどれだけ熱が逃げるかを示す指標です。(U=熱貫流率・A=平均という意味)
UA値は、低いほど断熱性能が高いということになります。つまり、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住まいにするためには、UA値をできるだけ小さくする必要があります。
では、どれくらいのUA値が良いのでしょうか?実は、日本では2022年から新たに断熱性能等級というものが設けられました。これは、地域ごとに定められたUA値とηAC値(イータエーシー値:平均日射熱取得率)によって、住宅の断熱性能を1から5までの5段階で評価するものです。
断熱性能等級について
現在の断熱性能等級は、1が最も低く、7が最も高いです。「等級5」は2022年4月に新設されたもので、従来の最高レベルであった等級4よりもさらに厳しい基準となっています。また、2022年10月には「等級6」「等級7」が新設されました。2025年には従来最高レベルであった「等級4」が最低等級になります。
断熱性能等級が高くなるにつれて、等級が低い家に比べ各段に住み心地が良くなります。また、冷暖房費やCO2排出量も大幅に削減することが期待できます。
UA値は「平均値」なので、窓の断熱性能が著しく低くても、壁の断熱性能をオーバースペックにして補うことで、UA値を良い数値にすることができてしまいます。しかし、これでは部分的に温度差が生じて不快感を感じたり、結露やカビの原因になったりする可能性があります。そこで、Q値やC値という指標も併せて考慮する必要があります。
UA値の算出方法
UA値=各部の熱損失量の合計÷延べ外皮面積
UA値を低くするためにできる方法
高い性能を持つ断熱素材を使用する
断熱素材の種類や厚さによって、外気との熱のやりとりを抑えることができます。
窓の性能やサッシ性能を高くする
窓は外気との熱のやりとりが最も多い部分なので、ガラスの枚数や種類、サッシの材質や断熱構造などに注意する必要があります。
夏の日射遮蔽、冬の日射取得を考える
窓から入る日射は、夏は室内温度を上げる要因になりますが、冬は暖房効果になります。そのため、カーテンやシャッターなどで日射を調節することで、UA値を低くすることができます。
外壁や屋根の色を選ぶ
外壁や屋根の色は、日射吸収率に影響します。日射吸収率が高い色は、日射を多く吸収して室内温度を上げますが、日射吸収率が低い色は、日射を反射して室内温度を下げます。そのため、地域や気候に合わせて外壁や屋根の色を選ぶことで、UA値を低くすることができます。
気密性能を高める
気密性能とは、住宅にある隙間から空気が漏れ出したり入り込んだりすることを防ぐ能力のことです。気密性能が高いほど、外気との熱のやりとりが少なくなります。気密性能はC値という数値で表されますが、C値が低いほど気密性能が高いということになります。
UA値は断熱性能だけではなく、換気性能や給湯性能なども関係しています。そのため、UA値だけではなく、Q値やC値なども併せて考慮することが大切です。
地域別UA値の基準値について
UA値の基準値は、日本を8つの地域区分に分けて設定されています。
1地域 0.46以下
北海道
2地域 0.46以下
北海道
3地域 0.56以下
青森県、秋田県、岩手県
4地域 0.75以下
南東北、北関東、信越
5地域・6地域 0.87以下
南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州
7地域 0.87以下
宮崎県、鹿児島県
8地域 基準値なし
沖縄県
ただし、これらは最低限の基準値であり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準ではUA値は0.5以下、先進的に断熱性能向上に取り組んでいる建築会社さんではUA値は0.3以下のところもあります。以下は地域別の断熱性能等級とUA値の基準です。
断熱性能等級とUA値
断熱性能等級 | 地域区分 | |||||||
1 (夕張等) |
2 (札幌等) |
3 (盛岡等) |
4 (会津若松等) |
5 (水戸等) |
6 (東京等) |
7 (熊本等) |
8 (沖縄) |
|
等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | – |
等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | – |
等級5 | 0.40 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | – |
等級4 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | – |
Q値ってなに?
Q値とは家の断熱性能を示す数値で、「熱損失係数」とも呼ばれます。Q値が低いほど、家の中の熱が外に逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。Q値は、家の床、壁、屋根、窓などの開口部を通じて外に逃げる熱量を、外皮面積の合計で割ることで算出されます。
Q値の算出方法
Q値=総熱損失量÷床面積
Q値は、家の床、壁、屋根、窓などの開口部を通じて外に逃げる熱損失量を、延べ床面積の合計で割ることで算出されます。
Q値が低い家は、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を保つことができます。これは、外気温の影響を受けにくくなるためです。エアコンを使用する場合でも、空調速度が上がるとともに快適な気温を保つ時間が長くなります。また、エアコンやファンヒーターを使用する時間を短くすることで、毎月の光熱費を節約することができます。
Q値を下げるためには、「熱損失量を下げる」「住宅の延べ床面積を増やす」どちらかの工夫が必要です。熱損失量は、使用する部材の種類によって異なります。例えば断熱材の種類、ガラス窓やサッシの種類、外壁材や屋根材の種類ごとに熱貫流率(U値)が違うため、Q値を下げるためには熱貫流率の低い部材を選択することが重要です。
注意点としては、Q値は家の床面積の違いによって数値にバラツキが出て、家が小さいと数値が大きくなる傾向があり、断熱性能を平等に比較するためにUA値に変更されたとされています。これは、Q値は延べ床面積で割る数値であるのに対し、UA値は外皮面積で割る数値であるためです。
C値ってなに?
C値とは「相当すき間面積」のことで、住宅全体にどれくらい隙間があるかを示す数値です。C値は、高いほど気密性能が低いということになります。つまり、冷暖房時に外気が入り込んだり、室内の空気が漏れ出したりすることを防ぐためには、C値をできるだけ小さくする必要があります。
C値の算出方法
C値=建物全体の隙間の合計面積÷延べ床面積
C値の地域ごとの基準値は、かつては省エネ法に基づいて定められていましたが、2009年の省エネ法改正によって廃止されました。理由としては、C値だけでは気密性能を正しく評価できないという問題があったからです。C値は気密性能の指標の一つですが、断熱性能や換気システムとのバランスも重要です。現在は、本記事のテーマでもあるUA値という外皮性能の指標が省エネ基準に採用されています。
まとめ
UA値は健康で住みやすい住宅を作る上での重要な指標の一つですが、UA値だけでなく、Q値やC値も併せて考慮することで、快適で省エネな住まいを実現することができます。断熱性能等級高くなればなるほど、初期費用も高くなりますが、長期的に見ればランニングコストや環境負荷を抑えることができます。自分の予算やライフスタイルに合わせて、最適な断熱性能を選ぶようにしましょう。