「みらいエコ住宅2026事業」とは | 断熱リフォームで使える国の補助金をやさしく解説 公開日:2025年12月22日/更新日:2025年12月22日 ・築年数が古く、冬の寒さがつらい ・冷暖房をつけても効きが悪い ・光熱費が年々高くなっている こうした悩みを根本から改善するために、国が用意している制度がみらいエコ住宅2026事業です。 みらいエコ住宅2026事業は前回までの「子育てグリーン住宅2025助成金」の後継事業ですが、大きく内容が変更されている点もあり注意が必要です。 本記事では、既存住宅の改修工事・リフォーム工事に特化して、制度の考え方から基準の意味まで分かりやすく解説します。 目次 Toggle 制度の目的ひと目でわかる制度概要みらいエコ住宅2026事業(リフォーム)の概要この補助金の考え方補助額の区分と性能水準改修後の性能区分と補助上限額平成4年と平成11年の基準とは平成11年省エネ基準相当とは平成28年省エネ基準相当とは対象となるリフォーム工事主な対象工事の例対象となる住宅とリフォーム工事の考え方補助金を受けるための必須条件任意工事(必須工事と組み合わせて補助対象になるもの)必須工事の組み合わせとは何か「必須工事の区分」なぜ「窓」がすべての組み合わせに入っているのか他の補助金を使っている場合の読み替え先進的窓リノベ事業との違い制度の役割の違い申請時の注意点補助金利用の基本的な流れこんな方に向いている補助金ですさいごに 制度の目的 みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026)は、断熱や省エネ性能が十分でない既存住宅を、これからの時代に合った快適で省エネな住まいへと改修することを目的とした国の補助制度です。 家庭で使われるエネルギーを減らす 二酸化炭素の排出を抑える 快適で健康的に暮らせる住まいを増やす 住宅のエネルギー消費や二酸化炭素排出を減らしながら、住まいの快適性や暮らしやすさを高めるために、省エネリフォームを後押しする役割を担っています。 ひと目でわかる制度概要 みらいエコ住宅2026事業(リフォーム)の概要 項目 内容 事業名 みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026) 予算 約1,125億円(内リフォームは300億円) 対象 既存住宅(戸建住宅、共同住宅) 補助上限額 最大100万円/戸 補助方法 未発表 工事内容 断熱改修、開口部改修、省エネ設備導入 申請者 登録されたリフォーム事業者 実施期間 2025年11月28日以降に着手し、申請期限までに完成 申請期限 予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月末) 公式サイト みらいエコ住宅2026事業について ※重要 工事完了後の申請は認められていません。必ず着工前に、補助対象となるか確認が必要です。 この補助金の考え方 みらいエコ住宅2026事業のリフォーム補助は、工事の内容そのものよりも、改修後の住宅性能水準で補助額が決まります。 つまり、窓を何カ所交換したか、断熱材をどれだけ入れたかという工事の量だけではなく、住宅全体として省エネ基準をどこまで満たすかが評価されます。 補助額の区分と性能水準 平成11年基準、平成28年基準とは何かを、表とともに解説します。 改修後の性能区分と補助上限額 改修後の住宅性能水準 補助上限額 平成28年省エネ基準相当まで向上 最大100万円 平成11年省エネ基準相当まで向上 最大80万円 一定の省エネ性能向上 40万円から50万円程度 平成4年と平成11年の基準とは 住宅の省エネ性能には、国が定めた「基準」があります。これは、住宅で使うエネルギーをできるだけ無駄なく使うために、法律に基づいて決められたものです。 その中で、1992年に定められた基準を 平成4年基準、1999年に定められた基準を 平成11年基準 と呼びます。 平成4年基準は、それまでの住宅よりも省エネ性能を高めることを目的に作られた基準で、一般的には 新省エネルギー基準と呼ばれています。 一方、平成11年基準は、さらに断熱性能や省エネ性能を強化した基準で、次世代省エネルギー基準と呼ばれます。 みらいエコ住宅2026事業では、「今の住宅がどの基準レベルなのか」「リフォームによって、どこまで基準を引き上げるのか」によって、補助金の上限額が変わる仕組みになっています。 平成11年省エネ基準相当とは 主な考え方 壁、天井、床などに一定水準の断熱材が施工されている 単板ガラスではなく、断熱性能を考慮した開口部構成になっている 住宅全体の熱の逃げやすさが一定以下に抑えられている 無断熱、もしくは断熱材がほとんど入っていない住宅と比べると、体感温度や冷暖房効率が大きく改善しやすい水準です。 平成28年省エネ基準相当とは 平成28年省エネ基準は、現在の住宅に求められている基本的な省エネ基準です。 この基準まで性能を引き上げると、冬の寒さや夏の暑さが改善され、光熱費削減効果も安定して実感しやすくなります。 そのため、平成28年基準まで到達する改修には、最も高い補助上限額が設定されています。 主な考え方 外皮全体の断熱性能がより厳しく評価される 窓、壁、天井、床をバランスよく断熱することが重要 冷暖房に使うエネルギー量が抑えられる 対象となるリフォーム工事 断熱改修が中心となる制度です。代表的な対象工事を表にまとめます。 主な対象工事の例 工事区分 内容 窓、開口部の断熱改修 内窓設置、外窓交換、ガラス交換 天井の断熱改修 天井裏への断熱材施工 床の断熱改修 床下への断熱材施工 壁の断熱改修 壁内部への断熱材充填 省エネ設備改修 高効率給湯器など とくに窓と天井、床の断熱改修は、費用対効果が高く、性能向上に直結しやすい工事です。 対象となる住宅とリフォーム工事の考え方 みらいエコ住宅2026事業のリフォーム補助は、どんな工事でも対象になるわけではありません。 対象となるのは、平成4年基準、または平成11年基準を満たしていない既存住宅に対して、一定以上の省エネ性能を確保するためのリフォーム工事を行う場合です。 補助金を受けるための必須条件 リフォームで補助金を受けるには、次の条件をすべて満たす必要があります。 対象住宅であること(平成4年基準未満、または平成11年基準未満の住宅) 後述する①から③の「必須工事」に含まれる改修工事を、決められた組合せで行うこと 1回の申請での補助額合計が5万円以上であること 工事内容を証明する書類を提出できること なお、人が住む予定のない建物や空間に対する工事は対象外です。 また、他の住宅省エネ2026キャンペーンの補助金を利用している場合でも、一定の条件下で「必須工事」として扱われます。※先進的窓リノベ2026事業は①、給湯省エネ2026事業は③として扱われます。 必須工事① 開口部の断熱改修(窓やドアの断熱) 住宅の中で最も熱の出入りが多いのが、窓やドアなどの開口部です。 そのため、開口部の断熱改修は、必須工事のひとつとされています。 対象となる工事は、次のような内容です。 既存の窓ガラスを、断熱性能の高い複層ガラスなどに交換する工事 既存窓の内側に新たに内窓を設置する工事 既存の窓を撤去し、新しい高性能な窓に交換する工事 既存のドアを断熱性能の高いドアに交換する工事 窓やドアの性能については、国が定めた基準を満たす製品を使用する必要があります。 なお、ドアに付いているガラス部分だけを交換する工事は対象外です。 必須工事② 躯体の断熱改修(天井・壁・床の断熱) 窓だけでなく、 天井・屋根・外壁・床といった建物本体の断熱も重要なポイントです。 対象となるのは、 各部位ごとに、一定量以上の断熱材を使用する断熱改修工事です。 断熱材には性能区分があり、 どの断熱材を、どれだけの量使ったかによって対象かどうかが判断されます。 断熱材の種類だけでなく、 「使用量」も条件になる点が、この制度の大きな特徴です。 必須工事③ エコ住宅設備の設置 省エネ性能を高めるための住宅設備の設置も、必須工事のひとつです。 次のいずれかの設備を設置する工事が対象となります。 太陽熱利用システム 節水型トイレ 高断熱浴槽 高効率給湯器 節湯水栓 蓄電池 エアコン 換気設備 いずれも、国が定めた性能基準を満たす製品であることが条件です。 任意工事(必須工事と組み合わせて補助対象になるもの) 必須工事に加えて、次のようなリフォーム工事も補助対象に含めることができます。 子育て対応改修 食洗機や掃除しやすいレンジフードなど、家事負担を軽減する設備の設置 防犯性能を高める窓の改修 生活騒音に配慮した窓の改修 キッチンを対面型にするための改修 防災性向上改修 耐風圧性能や耐衝撃性能を高める窓やドアの改修 バリアフリー改修 手すりの設置 段差の解消 廊下や出入口の幅を広げる工事 衝撃を和らげる畳の設置 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 空気清浄や換気機能を備えた高性能エアコンの設置 リフォーム瑕疵保険への加入 国が指定する保険法人が取り扱うリフォーム瑕疵保険や、大規模修繕工事瑕疵保険への加入 必須工事の組み合わせとは何か みらいエコ住宅2026事業のリフォーム補助では、「この工事をすれば必ず補助対象になる」という単純な仕組みではありません。 国が求めているのは、住宅全体の省エネ性能を、一定水準まで引き上げることです。 そのため、窓だけ、設備だけ、といった単独工事ではなく、複数の省エネ改修を組み合わせることが必須条件として定められています。 この「どの工事を、どう組み合わせる必要があるか」を整理したものが、下記の必須工事の組み合わせ表です。 さて、ここからはそれぞれの基準を達成させるための工事の組み合わせを確認していきましょう。 【注意】組み合わせは現時点(2025/12/17)での検討案のため、正式には後日公表されます。 「平成4年基準を満たさない住宅」における、「平成11年基準」を確保するためのリフォーム組み合わせ 開口部※1 躯体※2 住宅設備※3 屋根・天井 床 外壁 給湯器 エアコン 換気設備 ① P以上 ― ― ― ② S以上 C以上※4 ― ― ― ③ A以上 C以上 C以上 ― ― ― ※1 熱貫流率の基準 P:1.1以下 S:1.5以下 A:1.9以下 ※2 断熱材の区分 A1~Fまで7段階あり、セルロースファイバー断熱材はC区分となる。 ※3 エコ住宅設備の基準 基準を満たす該当設備または、「給湯器省エネ2026事業」または「賃貸集合給湯器省エネ2026事業」の利用 ※4 開口部の改修を行った室の外皮が屋根・天井となる場合は屋根・天井の断熱改修として読み替える 「平成4年基準を満たさない住宅」における、「平成28年基準」を確保するためのリフォームの組合せ 開口部※1 躯体※2 住宅設備※3 屋根・天井 床 外壁 給湯器 エアコン 換気設備 ① P以上 設置 設置 設置 ② S以上 C以上※4 設置 設置 設置 ③ A以上 C以上 C以上 設置 設置 設置 ※1 熱貫流率の基準 P:1.1以下 S:1.5以下 A:1.9以下 ※2 断熱材の区分 A1~Fまで7段階あり、セルロースファイバー断熱材はC区分となる。 ※3 エコ住宅設備の基準 基準を満たす該当設備または、「給湯器省エネ2026事業」または「賃貸集合給湯器省エネ2026事業」の利用 ※4 開口部の改修を行った室の外皮が屋根・天井となる場合は屋根・天井の断熱改修として読み替える 「平成11年基準を満たさない住宅」における、「平成11年基準」を確保するためのリフォームの組合せ 開口部※1 躯体※2 住宅設備※3 屋根・天井 床 外壁 給湯器 エアコン 換気設備 ① P以上 ― ― ― 「平成11年基準を満たさない住宅」における、「平成28年基準」を確保するためのリフォームの組合せ 開口部※1 躯体※2 住宅設備※3 屋根・天井 床 外壁 給湯器 エアコン 換気設備 ① P以上 設置 設置 ― 「必須工事の区分」 区分 内容 ① 開口部の断熱改修(窓・ドア) ② 躯体の断熱改修(天井・壁・床) ③ エコ住宅設備の設置 この①〜③を、決められた組み合わせで実施することが補助金の条件です。 組み合わせ表を読み解く 平成4年基準を満たさない住宅の場合改修前:平成4年基準を満たさない住宅 到達させる省エネ基準 必須となる工事の組み合わせ 平成11年基準相当 ① 開口部の断熱改修 + ② 躯体の断熱改修 平成28年基準相当 ① 開口部の断熱改修 + ② 躯体の断熱改修 + ③ エコ住宅設備の設置 比較的古い住宅では、まず「窓」と「建物本体」の断熱をしっかり行うことが前提 より高い性能(平成28年基準)を目指す場合は、断熱に加えて設備の省エネ化も必須 平成11年基準を満たさない住宅の場合 改修前:平成11年基準を満たさない住宅 到達させる省エネ基準 必須となる工事の組み合わせ 平成11年基準相当 ① 開口部の断熱改修 平成28年基準相当 ① 開口部の断熱改修 + ③ エコ住宅設備の設置 こちらは、平成4年基準を満たさない住宅より、求められる内容が一段軽く設定されています。 すでに一定の断熱性能がある住宅では、まず窓の断熱強化が中心 平成28年基準まで引き上げる場合は、省エネ設備の導入が追加で必要 なぜ「窓」がすべての組み合わせに入っているのか 組み合わせ表を見ると、すべてのパターンに ① 開口部の断熱改修 が含まれています。 これは、住宅の熱の出入りの多くが、窓やドアなどの開口部から起きているためです。 国としては「住宅全体の省エネ性能を上げるうえで、まず窓の性能向上が欠かせない」という考え方を、この表で明確に示しています。 他の補助金を使っている場合の読み替え 現時点での検討案には、次のような読み替えルールも示されています。 先進的窓リノベ2026事業で窓改修を行っている場合 → 必須工事①(開口部の断熱改修)を実施したものとして扱われます 給湯省エネ2026事業、賃貸集合給湯省エネ2026事業を利用している場合 → 必須工事③(エコ住宅設備の設置)を実施したものとして扱われます つまり、築年数・改修要件・補助対象工事の必須要件が、前回の子育てグリーン住宅からの大きな変更点になります。 先進的窓リノベ事業との違い 断熱リフォームを検討する際、先進的窓リノベ事業との違いが分かりにくいと感じる方も多いでしょう。 制度の役割の違いを表で整理します。 制度の役割の違い 項目 みらいエコ住宅2026 先進的窓リノベ 制度の目的 住宅全体の省エネ性能向上 窓の断熱性能向上 対象工事 断熱、設備など 窓工事のみ 補助上限額 最大100万円 最大200万円 評価方法 住宅全体の性能 窓単体の性能 窓工事だけを集中的に行う場合は先進的窓リノベ、住宅全体の断熱性能を底上げする場合はみらいエコ住宅2026、という使い分けが基本です。 申請時の注意点 リフォームでは特に重要です。基本的な流れを整理します。 補助金利用の基本的な流れ リフォーム内容の検討 補助対象となるか事前確認 工事請負契約 交付申請 工事着工 工事完了、実績報告 補助金交付 ※重要 工事を始めてから補助金を申請することはできません。必ず、契約と着工の前に制度確認が必要です。 こんな方に向いている補助金です 築年数が経ち、家全体の寒さ暑さに悩んでいる 窓だけでなく、天井や床も含めて断熱したい 将来を見据えて住宅性能を引き上げたい 光熱費の負担を長期的に減らしたい 部分的な修繕ではなく、住まいの性能そのものを改善したい方に向いた制度です。 さいごに みらいエコ住宅2026事業は、既存住宅をこれからの時代に合った性能へ引き上げるための補助制度です。 平成11年基準、平成28年基準といった性能水準の違いを理解した上で計画することが、補助金を最大限活用するポイントになります。 断熱リフォームは、快適性、光熱費、健康、住宅価値すべてに関わる重要な工事です。 補助金は予算に限りがあるため、検討段階から早めに専門業者へ相談することをおすすめします。 制度内容に関する注意事項 本記事の内容は、現時点(公開時点)で国から公表されている資料・情報をもとにまとめています。 「みらいエコ住宅2026事業」は、今後 補助対象製品・補助額・組み合わせ方、申請スケジュール等の詳細が順次公表・更新される予定です。 制度の詳細や運用ルールに変更・追加があった場合は、本ページも最新情報にあわせて随時更新していきます。 実際の補助金利用にあたっては、最新の公式情報および対応事業者への事前確認をおすすめします。