ペアガラスとは?仕組み・効果・費用まで徹底解説 公開日:2025年9月9日/更新日:2025年9月11日 監修者斎木 守 住宅省エネアドバイザー/第二種電気工事士/しろあり防除士 三重県出身。学生時代は長野県で農業・畜産を学び、地域のコミュニティ活動にも積極的に参加。寒さには人一倍敏感で、自身も松本市で築30年の木造住宅に暮らし、経験を踏まえて長野県の断熱性能向上を支援しています。YouTube「テオリアチャンネル」でも活躍中。新築・リフォームを含め、これまでに1,800棟以上の断熱工事に携わっています。 「ペアガラス」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的にどのような仕組みで効果を発揮するのかを正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。 ・結露を減らしたい ・夏の暑さや西日を抑えたい ・冷暖房費を下げたい ・静かな室内にしたい 目的によって最適解は変わり、同じ家の中でも方位や窓の大きさで選び方は異なります。 本記事では、ペアガラスの仕組みや性能指標(U値)、Low-Eガラスの遮熱・断熱の違いと使い分け、内窓や外窓交換との比較、費用相場と施工の流れ、補助金の活用ポイントまでを整理しています。 読了後には、「我が家のどの窓に、どのガラスを選べばムダなく効果が出るか」が具体的に判断できるはずです。 目次 Toggle ペアガラスの基礎知識ペアガラスの構造と特徴Low-Eペアガラスの種類ペアガラスで解決できる住まいの悩み冬の寒さと結露対策夏の暑さ・日射対策騒音低減効果ペアガラスへの交換と他の窓断熱方法の比較ガラス交換(ペア・Low-E)ガラス交換(真空ガラス・トリプルガラス)内窓(二重窓)外窓交換補助金・助成金を活用する方法施工事例と効果データ【事例:長野県・築10年木造住宅】後悔しないための注意点ガラス交換だけでは結露が完全に解消されないLow-Eガラスの反射で外観が変わるマンション規約違反に該当最適な窓リフォームを選ぶポイント結露が主な悩みの場合夏の暑さ・西日の強さが気になる場合騒音を軽減したい場合全体的に住まいを高性能化したい場合まとめ:まずは現状把握から ペアガラスの基礎知識 ペアガラスとは、2枚のガラスの間に空気層またはガス層を設けた複層構造のガラスを指します。単板ガラス(1枚ガラス)に比べて断熱性・遮音性が向上し、結露の軽減にも役立ちます。 特に近年は、表面に特殊な金属膜をコーティングした「Low-E(ローイー)ガラス」が普及しており、従来のペアガラスよりもさらに高性能になっています。 この仕組みを理解することで、「結露を減らしたい」「光熱費を抑えたい」といった住まいの悩みに対して、どのように効果があるのかをイメージしやすくなるでしょう。 ペアガラスの構造と特徴 ペアガラスの大きな特徴は、2枚のガラスの間に設けられた中空層です。 この部分には以下のような役割があります。 断熱 空気やアルゴンガスなどの熱を伝えにくい層を挟むことで、外気温の影響を室内に伝えにくくします。 結露 室内側のガラス表面温度が外気温の影響を受けにくくなるため、単板ガラスに比べて結露が発生しにくくなります。 遮音 中空層が音の振動を緩和し、外部からの騒音を抑える効果があります。 特に断熱性能を表す指標として「U値(熱貫流率)」がありますが、数値が小さいほど断熱性が高いとされます。一般的に単板ガラスが約6.0W/㎡・K前後であるのに対し、ペアガラスは約3.0W/㎡・K程度まで下がり、体感でも大きな差を感じられます。 つまり、ペアガラスは単なる「ガラスの枚数が増えた製品」ではなく、空気層やガス層を活用した断熱構造そのものが快適性を左右しているのです。 Low-Eペアガラスの種類 従来のペアガラスをさらに進化させたのが「Low-E(Low Emissivity=低放射)ガラス」です。 ガラス表面に薄い金属膜をコーティングすることで、赤外線の放射を抑え、より効率的に熱の出入りをコントロールできます。 Low-Eガラスには大きく分けて以下の2種類があります。 遮熱タイプ 断熱タイプ 夏の強い日射熱を室内に入れにくくする仕様。西面や南面など、直射日光を多く受ける窓に適しています。冷房効率を高め、夏場の室温上昇を抑える効果が期待できます。 室内の暖かい空気を外へ逃がさない仕様。北面や冬の寒さが厳しい地域で特に有効で、暖房費の削減につながります。 設置する方位や用途によって選び分けることが重要であり、例えば「南面は遮熱タイプ、北面は断熱タイプ」といった組み合わせが最適解となるケースもあります。 このようにLow-Eガラスは、単に「性能が高いガラス」というだけではなく、住まいの立地や生活スタイルに合わせて選ぶべき製品といえます。 ペアガラスで解決できる住まいの悩み 窓は住宅の中で最も熱や音が出入りしやすい部位です。そのため「冬の寒さや結露」「夏の暑さ」「騒音」「高い光熱費」といった住まいの悩みは、窓の性能と深く関係しています。ペアガラスはこれらの問題を一定程度改善できるものの、その効果には特徴や限界もあります。ここでは具体的な課題ごとに見ていきましょう。 冬の寒さと結露対策 単板ガラスの窓は、冬場に外気温が0℃前後になると、室内側のガラス表面温度が10℃を下回ることも珍しくありません。その結果、室温が20℃程度に保たれていても、窓際に立つと「ヒヤッ」と冷気を感じてしまいます。 ペアガラスの場合、中空層によって外気の冷たさが伝わりにくくなるため、室内側のガラス表面温度は単板ガラスよりも数度高く保たれます。 結露についても、ガラス表面の温度が下がりにくいことで水滴が発生しにくくなります。ただし、アルミサッシの枠部分は依然として結露が起こりやすく、「ガラス交換だけで結露が完全に解消するわけではない」という点も理解しておく必要があります。 夏の暑さ・日射対策 夏の強い日差しは、窓を通じて室内に大きな熱をもたらします。特に西日や南面の窓は、日中から夕方にかけて室温を一気に押し上げる原因となります。 Low-Eガラスの「遮熱タイプ」を採用すると、ガラス表面にコーティングされた特殊金属膜が赤外線を反射し、室内に入る日射熱を40〜70%程度カットできます。これにより、窓際の体感温度が下がるだけでなく、冷房の効率も向上します。 実際に南面の掃き出し窓をLow-E遮熱タイプに交換したところ、真夏の午後における室温が約2℃下がったケースもあります。冷房の効きが良くなることで、結果的に電気代の節約にもつながります。 騒音低減効果 窓から侵入する音は、ガラスやサッシの振動を通じて室内に伝わります。ペアガラスは中空層を持つため、単板ガラスに比べて約5〜10dB程度の騒音低減効果が期待できます。数値で見るとわずかに思えますが、体感的には「車の通行音が少し遠ざかったように聞こえる」程度の違いがあります。 ただし、騒音対策を主目的とする場合は注意が必要です。ペアガラス単体では防音効果に限界があり、内窓(二重窓)を追加することでさらに15〜20dB低減できるケースもあります。また、防音ガラスは合わせガラスに特殊中間膜を挟み、特定の周波数帯(話し声や交通音)に強い性能を発揮します。 つまり、「少しでも静かにしたい」というレベルであればペアガラス交換で十分ですが、寝室や子ども部屋などで本格的に静けさを求めるなら、内窓や防音ガラスとの組み合わせが効果的です。 ペアガラスへの交換と他の窓断熱方法の比較 窓の断熱性能を高める方法はペアガラス交換だけではありません。代表的な選択肢には「ガラス交換」の他に「内窓設置(二重窓)」「外窓交換」があります。 それぞれの効果や費用感、工事規模が異なるため、住まいの状況や目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。以下の表で概要を整理しました。 方法 メリット デメリット 費用感(目安) 工事規模 ガラス交換 (ペア・Low-E) ・既存サッシを残せるため外観を変えず施工可能 ・費用が比較的安い ・施工時間が短い(1窓30分〜1時間) ・アルミサッシ部分の断熱不足は残る ・結露が完全には防げない 腰窓:約2〜3万円 掃き出し窓:約4〜6万円 小 ガラス交換 (真空ガラス・トリプルガラス) ・非常に高い断熱性能(単板の約4〜5倍) ・結露防止効果が大きい ・施工時間が短い(1窓30分〜1時間) ・価格が高い ・重量がありサッシの制約が多い ・施工できる業者が限られる 腰窓:約7〜10万円 掃き出し窓:約12〜18万円 小 内窓 (二重窓) ・断熱・結露・防音に効果的 ・施工時間が短い(1窓30分〜1時間) ・空き巣リスクが軽減(窓が二重で侵入に時間がかかるため) ・窓が二重になり開閉スペースが必要 ・窓枠が厚くなりカーテンや家具と干渉する場合あり 腰窓:約4〜6万円 掃き出し窓:約7〜10万円 小 外窓交換 ・サッシごと最新仕様に一新できる ・断熱・気密・遮音をまとめて改善可能 ・外観デザインも変えられる ・工事規模が大きく、費用が高い ・外壁補修が必要なケースもある 腰窓:約8〜12万円 掃き出し窓:約15〜20万円 中〜大 ガラス交換(ペア・Low-E) 既存のサッシをそのまま利用し、ガラス部分のみをペアガラスやLow-Eガラスに交換する方法です。 見た目を変えずに施工でき、費用も比較的安いのが大きなメリットです。また工事時間も短いため、生活への影響が少なく気軽に導入できます。 ただし、サッシ自体の断熱性は改善されないため、アルミサッシの場合には枠部分の結露や冷え込みは残る可能性があります。結露対策を最優先にする場合には注意が必要です。 ガラス交換(真空ガラス・トリプルガラス) 最新の高性能ガラスで、2枚のガラスの間を真空にしたものや、3枚構造で空気層を設けたものです。 非常に高い断熱性能を持ち、結露防止効果も大きいため、省エネ性や快適性を追求したい方に選ばれます。 ただし、価格が高く、重量があるためサッシの制約が多い点がデメリットです。また、施工できる業者も限られるため、導入には事前の確認が欠かせません。 内窓(二重窓) 既存の窓の内側に樹脂製の窓を新設する方法です。 断熱・結露・防音に最も効果が高く、施工が簡単という点で人気があります。施工時間は1窓あたり30分~1時間前後と短く、補助金制度の対象にもなりやすいため、費用を抑えつつ高い効果を得たい方に適しています。 一方で、窓が二重になるため開閉にスペースが必要になり、カーテンや家具の配置を見直さなければならないケースもあります。 外窓交換 サッシごと窓を入れ替える方法です。 古いアルミサッシから樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシに交換することで、断熱・気密・遮音性能を一気に改善できます。外観デザインを一新できるのも大きなメリットです。 ただし、工事規模が大きく費用も高額になります。外壁との取り合い次第では外壁補修が必要となる場合もあり、生活への影響も大きくなります。 補助金・助成金を活用する方法 窓リフォームは、費用対効果が高い一方で、複数窓を同時に施工するとまとまった出費になります。そんなときにぜひ活用したいのが、国や自治体が用意している補助金制度です。補助金を上手に利用すれば、実質負担を20~50%程度減らすことも可能です。ここでは代表的な制度を整理してご紹介します。 【先進的窓リノベ事業】 高性能な窓リフォームを対象とし、最大200万円の補助が受けられる制度。内窓設置やガラス交換が対象となる。 【子育てグリーン住宅支援事業】 子育て世帯や若者夫婦世帯を中心に、断熱リフォームを支援。窓リフォームだけでなく天井や床など住宅全体の省エネ改修が対象。 【地域独自の補助金】 (例:信州健康ゼロエネ住宅助成金など) 自治体ごとに断熱改修や省エネ住宅化を支援する制度がある。国の補助金と併用できる場合もあり、実質負担を大幅に減らせる。 補助金は「対象製品であるか」「工事を行う時期が予算内であるか」が大きなポイントです。制度を知らずに工事を進めてしまうと補助金を受けられない場合もあるため、計画段階で施工業者に相談することが大切です。 また、断熱リフォームの大型補助金は、2025年が最後の年といわれています。補助金を活用してお得に断熱リフォームしたい方は、お早めにお問い合わせください。 ▶無料の断熱診断お申し込みはこちら ▼断熱リフォームの補助金について詳しくはこちら 【大型補助金ラストイヤー】2025年断熱リフォームで活用できる補助金を完全解説!最大260万円支給も! 施工事例と効果データ 弊社では、工期が短く、断熱・結露・防音にも効果的な「内窓設置」をおすすめすることが多いです。実際に内窓を導入した住まいでは、どのような効果が得られるのでしょうか。事例とお客様の声を紹介します。 【事例:長野県・築10年木造住宅】 内窓設置 施工内容:リビング・寝室の内窓追加 お客様の声: 「リフォーム前は、温度ムラがあり部屋の場所によって暑い・冷房で寒いと感じることがありましたが、リフォーム後は部屋全体の温度が統一されたのか、部屋のどこにいても快適に感じます。2階へ上がったときのモワッとした暑さによる不快感が軽減されました。エアコンの使用頻度も前より抑えられたように感じています。」 導入後の変化: 夏のエアコンの設定温度24℃→27℃でも快適に。 ▶内窓設置について ▶暑さ対策リフォーム「2階快適プラン」について 実際に、国土交通省の「住宅の断熱性能とエネルギー消費に関する調査」でも、断熱改修後のエアコン使用量が15〜25%削減された例が報告されています。 これらの事例からわかるように、ペアガラスや内窓の導入は室温改善・光熱費削減といったメリットがあります。さらに結露抑制・防音効果など複数のメリットを同時に得られます。特に内窓は短い工期で効果が大きく、戸建て・マンションを問わず人気の高いリフォーム方法です。 後悔しないための注意点 窓リフォームは住まいの快適性を大きく改善できる一方で、選び方や施工方法を誤ると「思っていた効果が出ない」「見た目が想像と違う」といった後悔につながることがあります。ここでは、よくある失敗事例とその回避策を整理しました。 ガラス交換だけでは結露が完全に解消されない ○ 失敗例 既存のアルミサッシはそのままに、ガラスだけをペアガラスに交換したが、冬になるとサッシ部分に結露が発生し続けてしまった。 ○ 理由 アルミは熱を伝えやすいため、ガラスだけ性能を上げてもサッシから冷気が侵入し、結露が残ることがある。 ○ 回避策 ・サッシごと断熱性の高い樹脂サッシなどに交換する ・または、内窓を設置して「ガラス+サッシ」の両方を断熱化する Low-Eガラスの反射で外観が変わる ○ 失敗例 Low-Eガラスを導入したところ、外から見たときにガラスが鏡のように反射し、外観の印象が変わってしまった。 ○ 理由 Low-Eガラスには金属膜がコーティングされており、日射条件や角度によっては強い反射が出る。 ○ 回避策 ・施工前にガラスの見え方を確認する ・建物の立地や方位に合わせて「遮熱タイプ」「断熱タイプ」を選び分ける ・外観の意匠性を重視するなら、内窓で対応する方法も検討 マンション規約違反に該当 ○ 失敗例 マンションの窓を外窓交換しようとしたところ、管理規約で禁止されており、結局施工できなかった。 ○ 理由 マンションの外窓は共用部分にあたるため、住戸単位で勝手に交換することはできない場合が多い。 回避策 ・事前に管理組合や管理会社へ確認する ・内窓(二重窓)は専有部分の工事にあたるため、規約違反の心配がなく安心 このような失敗は、事前に情報を整理しておけば十分に回避できます。重要なのは「ガラス性能だけを見るのではなく、サッシ・外観・規約など住まい全体の条件を踏まえて選ぶこと」です。施工業者に相談し、生活スタイルや建物条件に合った提案を受けることが、後悔しないリフォームにつながります。 最適な窓リフォームを選ぶポイント 窓リフォームには複数の選択肢がありますが、大切なのは「何を一番解決したいのか」を明確にすることです。結露対策、夏の暑さ、騒音など、症状ごとに最適な方法は異なります。ここでは代表的なお悩み別におすすめのリフォーム方法を整理しました。 結露が主な悩みの場合 おすすめ:内窓(二重窓) 理由:ガラスと枠の両方を断熱化できるため、ガラス表面温度が下がりにくく、結露を大幅に減らせます。アルミサッシの弱点をカバーできるのもポイントです。 夏の暑さ・西日の強さが気になる場合 おすすめ:Low-Eペアガラス(遮熱タイプ)+必要に応じて外付け日射遮蔽(シェード等) 理由:遮熱タイプのLow-Eは赤外線を反射し、室内の温度上昇を抑制。冷房効率を高め、快適性と省エネを両立できます。 騒音を軽減したい場合 おすすめ:内窓(二重窓)+防音ガラス 理由:内窓で空気層を増やし、さらに合わせガラス(防音仕様)を組み合わせると、騒音低減効果は大幅に向上。交通量の多い道路沿いや鉄道近くの住宅に適しています。 全体的に住まいを高性能化したい場合 おすすめ:外窓交換や真空ガラス・トリプルガラス 理由:費用と工事規模は大きいものの、断熱・気密・デザインをまとめて改善可能。新築同様の快適性を求める方に向いています。 まとめ:まずは現状把握から 結露、暑さ、騒音といった住まいの悩みは、それぞれ原因が異なるため「万能な解決策」は存在しません。重要なのは、自宅の窓の状態や暮らし方に合った最適な方法を選ぶことです。 当社では、現地調査を通じて温度・湿度・結露の発生状況を確認し、最適なプランをご提案しています。補助金制度の活用方法や費用シミュレーションも含め、無料で診断・お見積もりが可能です。 「我が家にはどの方法が合うのか知りたい」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。 以下のフォームから簡単にお申し込みいただけます。 ▶無料の断熱診断お申し込みはこちら 執筆者 Ikeda 寒さは苦手な夏生まれ女子。断熱・シロアリ・エクステリアを勉強中。 自身も新築の際には、断熱性・防音性などに惚れ込み、断熱材「セルロースファイバー」を選択しました。 ふわふわかわいい「セルロースファイバー」の情報、寒い住宅の原因や対策などなど・・・体もお財布も温める情報を発信していきます!