【省エネ住宅の基礎】一次エネルギー消費量とは? 公開日:2023年5月15日/更新日:2024年12月20日 目次 Toggle 省エネ住宅の基礎:一次エネルギー消費量等級一次エネルギー消費量とは?一次エネルギー消費量等級とは?一次エネルギー消費量はどんな要素によって決まるの?一次エネルギー消費量を削減する6つの方法一次エネルギー消費量等級が高い住宅のメリット光熱費の削減快適な室内環境結露の抑制環境への貢献住宅の耐久性向上補助金や優遇制度の対象一次エネルギー消費量等級が高い住宅のデメリット初期費用が高い設計・施工の専門的な知識が必要メンテナンスの必要性設計の自由度が限られる可能性がある一次エネルギー消費量等級のまとめ 省エネ住宅の基礎:一次エネルギー消費量等級 省エネ住宅の基準としてあげられる指標はいくつかありますが、今回は「一次エネルギー消費量等級」についてお話しします。 一次エネルギー消費量とは? 一次エネルギー消費量とは、住宅や建築物を利用・使用する時に建物全体で消費するエネルギーを熱換算したものです。簡単に言うと、冷暖房・給湯・換気・照明などの住宅全体でかかるエネルギー1年分の総量を表しています。(一次エネルギー:石油・石炭・太陽光・風力など自然から直接得られるエネルギーのこと) 一次エネルギー消費量は、住宅の省エネルギー性能を評価するための基準の一つであり、新築される住宅・建築物の一次エネルギー消費量基準に適合となる水準は、BEI(Building Energy Index)≦1.0となります。BEIは、実際に建てる建物の設計一次エネルギー消費量を、地域や建物用途、室使用条件などにより定められている基準一次エネルギー消費量で除した値で評価します。 一次エネルギー消費量等級とは? 一次エネルギー消費量等級とは、住宅の暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率に基づいて、1から6までの6段階で評価される等級のことです。一次エネルギー消費量とは、住宅が一年間に消費するエネルギー量のことで、その量を基準として等級が決まります。一次エネルギー消費量等級が高いほど、省エネ性能が高いと言えます。 2022年4月1日から、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の等級として、一次エネルギー消費量等級6が新たに設定されました。等級6の基準では、BEI(Building Energy Index)≦0.8となっており、現行の省エネ基準よりも20%以上の削減が求められます。 等級 BEI 要求値 等級6(新設) o.8以下 ※1 省エネ基準▲20% 等級5 o.9以下 省エネ基準▲10% 等級4 1.0以下 省エネ基準 等級3(既存のみ) 1.1以下 – ※1 太陽光発電設備によるエネルギー消費量の削減は見込まない 一次エネルギー消費量はどんな要素によって決まるの? 外皮性能:外壁や窓などの断熱性能や気密性能 暖冷房設備:暖房や冷房の機器の効率や制御方法 換気設備:換気の方法や熱交換器の有無 給湯設備:給湯器の種類や効率 照明設備:照明器具の種類や効率 太陽光発電設備:太陽光発電システムの容量や発電量 これらの要素を工夫することで、住宅の一次エネルギー消費量を削減することができます。例えば、以下のような方法があります。 一次エネルギー消費量を削減する6つの方法 外皮性能を高めるために、断熱材や気密材を適切に施工する 暖冷房設備を高効率なものにするか、必要な部屋だけ暖冷房する 換気設備に熱交換器を付けることで、排気熱を回収する 給湯設備にエコキュートや太陽熱利用システムなどを採用する 照明設備にLEDや蛍光灯などを使用する 太陽光発電設備を設置して、自家発電した電力を利用する 住宅の一次エネルギー消費量を減らすことは、CO2排出量の削減や省エネ補助金の受給などにもつながります。また、快適な居住環境やランニングコストの低減なども期待できます。住宅の省エネルギー基準に準拠したプログラムや計算ツールなどもあります。 一次エネルギー消費量等級が高い住宅のメリット 光熱費の削減 一次エネルギー消費量を削減するためにエネルギー効率の高い冷暖房機器や給湯設備などを選択します。そのため住宅の光熱費を大幅に削減することができます。 快適な室内環境 高い断熱性・気密性により室温が安定します。それにより部屋間の温度差が少なく、冬暖かく夏涼しい1年を通して快適な室内環境となるのです。 結露の抑制 高気密高断熱住宅では、壁や窓の表面温度が外気の影響を受けにくくなるため結露が発生しにくくなります。結露を抑制することで、結露が原因のカビやダニの発生も抑えられ、健康に良い住環境を保てます。 環境への貢献 石油・石炭などの化石燃料の使用量を減らすことがCO2排出量削減につながり、地球温暖化防止に貢献できるのです。 住宅の耐久性向上 結露の抑制によって、住宅の耐久性に影響のある木材の腐朽・断熱性能の低下・シロアリ被害が抑えられます。住宅の寿命を延ばすことができるのです。 補助金や優遇制度の対象 一次エネルギー消費量等級が高い住宅は、国や自治体からの補助金や優遇制度の対象となる場合があります。 一次エネルギー消費量等級が高い住宅のデメリット 初期費用が高い 断熱性の高い断熱材や窓、換気システムなどを選択するためコストが高くなります。 設計・施工の専門的な知識が必要 高い省エネ性能を引き出すためには、断熱材の種類や厚み・換気システムの種類や配置などの専門的な知識や技術力が必要です。そのため、適切な業者を選ぶことが重要です。 メンテナンスの必要性 高気密高断熱住宅では、換気システムの定期点検やフィルター清掃などのメンテナンスが必要になります。メンテナンスを怠ると換気システムが正常に動かないと、室内の空気汚染や結露の発生などのリスクがあります。 設計の自由度が限られる可能性がある 高い断熱性や気密性を確保するために、窓の大きさや配置に制限がかかる場合や、壁内や天井への断熱材充填により間仕切りの位置や構造材の配置に制限がかかる場合があります。 一次エネルギー消費量等級のまとめ 一次エネルギー消費量とは、住宅が一年間に消費するエネルギー量のこと 一次エネルギー消費量等級とは、住宅の暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率に基づいて、1から6までの6段階で評価される等級で、等級が高いほど省エネ性能が高い ZEH水準の等級として、2022年4月1日から一次エネルギー消費量等級6が新たに設定された 省エネ住宅づくりには、一次エネルギー消費量を抑える工夫が必要 一次エネルギー消費量を減らす方法は、断熱性能の向上、省エネ設備の導入、自然エネルギーの利用などがある 一次エネルギー消費量等級が高い住宅は、光熱費削減・快適な室内環境・結露の抑制・環境への貢献・住宅の耐久性向上・補助金や優遇制度の対象といったメリットがある 一次エネルギー消費量等級が高い住宅は、初期費用が高い・設計や施工の専門的な知識が必要・メンテナンスの必要性・設計の自由度が限られる可能性があるといったデメリットがある 省エネ住宅づくりの基礎知識として、断熱性能の基準と一次エネルギー消費量について理解しておくことは大切です。これらの指標を今後の新築やリフォームの参考にしていただければ幸いです。